現代病草紙−皮膚科の診療室より−
 
 

フケ症はどうしたらいいの?
 

      
   フケは、誰にでも存在する生理的な現象です。では、フケとは何なのでしょうか。

  皮膚は、一番表層に表皮があります。その表皮の一番下層の基底細胞が分裂して上に

 あがっていく過程のなかで固い角質層に変わっていきます。そしてこの角質層は、

外界のいろいろな刺激から身体を守るという重要な役目を果たしているのです。

通常二週間ぐらいで基底細胞の分裂から、角質層に変わり、その後約二週間で

その角質層が剥がれ落ちます。この剥がれ落ちる角質のなかで頭皮のものを

フケと言っています。そして、このフケが多くなると、いわゆる「フケ症」と

呼ばれる状態になります。


  時々、背広や学生服の背中に白い粉のようなものがついている人を見かけますが、

それがまさにフケなのです。あまり格好のよいものではありませんね。


  これに対して「アカ」は、頭皮以外の表皮から剥がれ落ちる角質などです。

この剥がれ落ちる現象を皮膚科では「落屑(らくせつ)」と呼んでいます。つまり、

皮膚の表皮は、人体のなかでも最も活発にいつも細胞分裂を繰り返しているところ

なのです。


  それでは何故「フケ症」になるのでしょうか?

  フケ症の人の剥がれ落ちた角質を顕微鏡で調べてみますと、普通の人に比べて大

きく塊になっていて、しかも表皮細胞が完全に角化しない「錯角化(さっかくか)」

という状態が認められます

(皮膚科にはこうした難しい用語が多く、皆さんを
困らせると思います)


  さらに表皮下の真皮には軽い炎症像が確認されています。こうした事実からフケ症

は、微弱な炎症反応に伴って生ずる、頭皮の表皮細胞の分裂速度の増加による、

「過度の落屑」であるともいえます。


  その際、その原因として、最近、頭皮に生息する微生物の役割が重要視されて

きています。頭皮には、ニキビ桿菌(かんきん)と呼ばれる酸素がなくとも

増殖できる嫌気性菌やPityrosporum ovale(ピチロスボルム・オバーレ)

というかびの一種などが存在しています。


  このかびが、フケの原因として脚光を浴びているのです。このかびを

退治するとフケが少なくなることから分かってきたのですが、しかし実際の

ところフケ症の原因はまだよく分かっていません。


  頭皮での皮脂の分泌が多く、発汗もあるフケ症の方は、髪の毛によって

皮膚表面から熱や湿気が逃げずに、高温多湿になりやすい傾向があります。

栄養も豊富で必然的に微生物が繁殖しやすいですから、フケ症の人は、

シャンプーで何回も洗うとよいと言われています。ジンクピリジオンなどの

抗菌剤が入った、抗フケ剤入りシャンプーならば、よりよい効果が期待でき

ます。ただし、あまり強くシャンプーで洗いすぎると、頭皮が乾燥して、

かえってフケが多くなり、痒くなることもありますから、ほどほどに

しなくてはなりません。


  ところで脅かすわけではありませんが、フケ症でも単なるフケ症と

見過ごすわけにはいかないものもあります。頑固なフケ症で、いつも厚い

フケが付着しているような場合には、特殊な皮膚病、たとえば「脂漏性

皮膚炎(しろうせいひふえん)」や「乾癬(かんせん)」といった

難治性の皮膚病の部分症状であることもありますから、その時には

是非皮膚科専門医を受診してください。そしてしっかり治療を

受けなければなりません。


  ともかく、フケ症で悩んでいる方は、どんどん皮膚科専門医に

相談してください。たいがいの皮膚科には適切なローションやシャンプーが

おいてあります。これからはそうしたものを上手に利用して、クオリティー・

オブ・ライフ(略してQOL。生命の質、生活の質を重んじ、人生の質を重んじ、

真に豊かな人間生活)を高めることが日常生活では大切だと思われます。