現代病草紙−皮膚科の診療室より−



肌をきれいに保つにはどうすればいいの?


いつまでも肌をきれいに保てたら・・・、これはすべての女性の願いではないでしょうか。



 今回はその秘訣を少しだけお話しましょう。



 最近、皮膚の老化に最も関係しているのは、日光に含まれている紫外線であること

が分ってきました。例えばチベットのように紫外線照射が多く、また化粧する習慣の

ない国の女性は三十歳ほどで老人のように顔の皮膚がシミとシワだらけになってしま

います。



 一方、オーストラリアのようにオゾンホールに近く、紫外線の照射の多い国では、

SLIP(スリップ:シャツをまとう)、SLOP(スロップ:サンスクリーンを

塗る)、SLAP(スラップ:帽子をかぶる)が義務づけられているほど、紫外線を

防御することに積極的になっています。



 オゾン層が破壊され続けている現在の地球環境では、日本においても決して余所事

ではありません。私の幼少時、春の陽射しはやわらかい印象でした。しかし最近では

痛いという感じを受けます。



 紫外線による影響は、十八歳までにあびた量で決まるという報告があります。それ

が四十歳前後からシミやシワとして現れてくるのです。そして、さらに高齢になって、

そのシミから癌化がおこることが、以前より多くなったとの報告もあります。



 ともあれ、肌の美しさを保つためには紫外線の防御に細心の注意を払うことが

大切です。



 次に、洗い過ぎに気をつけてください。最近の人たちは、とにかく風呂に入りすぎ

ですし、また洗い過ぎです。その結果、皮膚の大切なバリアー機能を擦り取ってしま

うのです。すると、乾燥性皮膚になり、ホコリやダニなどが皮膚から容易に侵入し、

様々な炎症反応を起こしやすくなります。



 残念なことに大部分の方は、風呂で清潔にすることがとても健康的であると思って

いるようです。ちょうど宝石を磨くように・・・。ですが、人の肌は鉱物ではありま

せん。ナイロンタオルなどで擦って洗うことで皮膚は乾燥し、黒ずんできます。こう

した状態を「ナイロンタオル皮膚炎」と呼んでいます。是非ほどほどの入浴を心掛け

てください。



 肌を美しく保つためには、紫外線の防御と洗い過ぎないこと。この二つだけでも

しっかり理解し、実行すれば、肌の老化は確実に遅くなるはずです。



 では、できてしまったシミやシワはどうしたらよいでしょうか。シミには、ハイドロキノンや

あるいはコウジ酸といった物質の入った化粧品が、速効的ではありませんが、それなりの

効果があります。またレーザー照射で、色素沈着も時に消失させることもできます。

つい最近まで皮膚科医にはあまり評価されていませんでしたが、「ケミカル・ピーリング」は、

シミやシワそしてニキビにとても有効だと、ようやく認識されてきました。皮膚の

表面をグリコール酸やサリチル酸などの酸で処理して人工的に剥がすのです。その

結果、表皮や真皮が活性化して、簡単に言うと皮膚が若返ってきます。



 ただし、いずれも皮膚科医などの適切な判断と施術が必要です。特にケミカル・

ピーリングでは、白人より日本人の皮膚の方が弱いことが分っています。一般の

エステでは危険を伴うことがあります。是非皮膚科などの専門医に相談することを

お勧めします。



 私の医院でも、昨年から敢えてケミカル・ピーリングを始めました。結果はやはり

有効な手段だとよく分りました。高齢化社会を迎える今、以前お話ししたQOL(人生

の質の向上)を求めるさまざまな試みはとても大切だと思っています。肌をきれいに

保つことも、まさにその一つなのです。