現代病草紙−皮膚科の診療室より−
 
 

「コラーゲン」ってなに?
 

      
  最近「コラーゲン」といた医学的な専門用語をよく耳にします。情報メディアの急速な発達によって一方的に、マスコミ、書籍あるいはインターネットかたどんどん私たちに、あたかも知っているのが当たり前であるかのように、情報が流されている現実があるのではないでしょうか。

 例えばほとんどの方が、「アトピー」「アレルギー」「ステロイド」「体質改善」あるいは「角質層を取ろう」といった言葉を聞いたことがあると思います。診察中私は、そういった言葉を話す患者さんに、その言葉の意味は一体どんなことですかと、逆に質問してみます。そうした方は、いろいろな本などでよく勉強されていてとても感心させられます。しかし残念ながら最も基礎的な部分に関してはほとんど御存知でない方が多いように思われます。


例えば、「アトピー」と言おうものなら、もう一生治らない皮膚病であると誤解して
悲嘆にくれる患者さんやご家族の方が多いのです。(だから私は、患者さんにすぐには「アトピー」という言葉は使わないようにしています)                  
 
また、「アレルギー」になったら、牛乳と卵に気をつけなければなりませんね、と念
を押すお母さんを沢山知っています。しかし、牛乳と卵のアレルギーは、アレルギーの中ではごくごく一部の現象なのです。                            

さらに、「ステロイド」はとにかく恐い薬だから止めなければという風潮もありま
す。ところが「膠原病」などの病気で毎日ステロイドを内服しなければならない患者さんが沢山いらっしゃることを意外にも知らないのです。どうも今、内服に比べて「ステロイド外用剤」だけが悪者にされているように思われてなりません。            
 

そして、「体質改善」をすれば病気が治ると本気で思っている方も沢山います。たぶんそういう方は、訳の分からない栄養剤などを一生懸命飲んでいるのではないでしょうか。そんなに簡単に体質改善が可能なら、病気が簡単に治り、もっと長生きができるはずです。今までにそんなうまい話があったでしょうか。               


 

   テレビで聞いた「角質層を取ろう」という言葉には、さすがの私もびっくりしてしまいました。皮膚の最も大切な機能の一つは、外界からのバリアーとしての役割であることが最近とてもよく分かってきました。その機能を担う部位が実は皮膚の最外層にある「角質層」なのです。それをとってしまったら「いなばの白ウサギ」の世界です。

※ 後日「皮膚の構造」の図を載せる予定です。
 

皮膚の構成成分の一つとして「コラーゲン」があります。膠原繊維とも呼ばれています。これは、真皮の大部分の構成成分です。コラーゲンには保湿作用などの効用はありますが、それを塗ることで皮膚をきれいにしたり、若返るとは医学的には考えられません。                                               
   
 

実は、皆さんが知っていると思っているこういった医学的な専門用語は、皆さんの自尊心をくすぐりつつ、商売などをしやすくするための巧妙な手段としか私には思えないのです。そして、知らず知らずのうちに実態を持たない言葉だけが定着してきているようにも思っています。                                     
 
 

マスコミなどで難しい医学的な専門用語が出てきたら、すこし冷静に考えてみましょう。洗脳される前に、あなたの相談できる医師に聞いてほしいと思います。そんなことからも、あなたが信頼できそして気軽に相談できる医師(家庭医のようなもの)を持つことは、とても大切なことなのです。勿論どの科目の医師でも構いません。
それこそ皮膚科の医師でもよいのです。