現代病草紙−皮膚科の診療室より−
 
 

ニキビはどうすればいいの?
 

      
   青春のシンボル、ニキビ。専門的には「尋常性痤創」(じんじょうせいざぞう)

と言います。

 なぜ生じるのでしょうか。

 思春期は男性ホルモンの分泌が活発になります。これが皮脂腺を増殖させ、結果的に

皮脂の分泌が増加します。皮脂腺は毛包に開口していますので、皮脂は毛包内に

充満します。そしてそれが過剰に分泌されると、毛包内にたまり、角質と一緒に

なって出口を塞ぎます。これがニキビの最初の病変で、面皰(めんぽう)

といいます。


  多くは皮膚表面に開口していない白色面皰ですが、皮膚表面に開口している場合は

黒くなってきます(黒色面皰)。黒い色は酸化などのためと考えられています。

毛包内にはニキビ菌など、いくつかの細菌が常在しています。その中のリパーゼという

酵素を持った細菌が、たまった皮脂を分解して遊離脂肪酸を作ります。


  ニキビの場合、この遊離脂肪酸が毛包内で炎症反応を引き起こすのです。そして

さらに二次的に、化膿菌の感染などが加わって、面皰のほかに赤い丘疹やウミの入った

膿疱(のうほう)などさまざまな皮疹が生じ、混在してきます。放っておくと

シミになったり、瘢痕(はんこん)やケロイドを残すことがあります。


  ニキビには個人差があります。おおむね思春期といわれる十五、六歳から始まり

ますが、最近では小学校高学年からでも生じるようです。年齢が長じて生じる

同じような変化は「吹き出物」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。


   ニキビの治療の第一歩は、毛包および周囲の炎症を抑えることです。ミノサイク

リンなどの抗生物質は炎症をよく抑えます。またナジフロキサシンという新しい

外用剤も有効です。


  ただし、赤い丘疹や膿疱などがある状態の炎症を抑えるには、皮膚科専門医を受診

したほうがよいでしょう。炎症が少しおさまったら、面皰を圧出して、詰まっている

毛包を開けるとさらに有効ですが、これは自分で勝手にやってはいけません。


  炎症がおさまったら、スキンケアが大切になります。私のおすすめは、絹製のスポ

ンジなどで顔を軽く洗うことです。毛包の出口をふさがないようにすることと、血行を

よくする目的があります。その際、石鹸を使用して洗顔もします。ただし、脂性の方は

しっかり洗ってかまいませんが、乾燥肌の方は適度にしなくてはなりません。


  一般的に化粧はよくないとされています。毛包を塞いでしまうからです。

しかし私は、それほど厳密にならなくてもいいと思っています。どうしようもなく

ひどい場合には、アイシャドーと口紅だけのポイント化粧にとどめるようにしたら

いかがでしょう。むしろ夜に、基礎化粧品をしっかり塗りたくることのほうが問題です。

できるだけ止めたほうがベターです。


  食事はそうそう気にする必要はありませんが、たとえば、チョコレートをたくさん

食べると悪化するようなら控えるのは当然でしょう。


  大切なことは、ニキビは全身の体調と密接に関連していることを、常に心して

おくことです。過労、ストレス、睡眠不足などはニキビを悪化させる増悪因子です。

つまり、ニキビの出方で健康状態がわかるのです。


日頃からできるだけ規則正しい生活を心がけ、ニキビが悪化したら十分な休養や睡眠を

心がけましょう。


  ともかく、炎症が強い時には安易な自己診断、自己流の治療をしてはいけません。

必ず、皮膚科専門医に受診してください。そして正しいスキンケアを学んで実行しま

しょう。いつまでも「アバタもエクボ」というわけにはいきませんよ。