現代病草紙−皮膚科の診療室より−
 
 

紫外線は本当にこわいの?
 

  日光の中には紫外線という種類の光線があり、その波長によって三つに大別されています。波長の長いものからUVA(長波長紫外線)、UVB(中波長紫外線)、UVC短波長紫外線)です。波長の短い紫外線は成層圏のオゾン層で吸収されますので、人体に最も障害性の強いUVCは幸いにも地上には届きません。日焼けを起こす紫外線はUVBで、その約半分がオゾン層で吸収されます。                   
 

  ところが最近、オゾン層の減少が指摘され、紫外線の量が昔に比べてずいぶん増えているようです。特にオゾンホールに近いオーストラリアなどでは深刻な問題になっていると聞いています。                                   
 

  紫外線は、五月から六月にかけて最も強く、朝の十時から午後の二時くらいまでがピークだと言われています。意外なことですが、夏よりも春のほうが紫外線が強いことに注意してください。                                        

  

  紫外線の作用にはいろいろありますが、皮膚科で問題となるのは「皮膚老化」を促すことです。若い時に浴びた紫外線の量で、加齢とともにシミやソバカスあるいはシワができてきます。ちょっと、上腕の脇の下あたりの皮膚の色を見てください。他の露出している部位と比べてとても白いことに気付くでしょう。その白さがあなたの持って生まれた皮膚の色なのです。年齢が増すごとにその白さの違いに気付くはずです。それがまさに紫外線の影響なのです。                                
 

 
 

  こわいのは、老いるに従ってそうした日光で傷害された部位から皮膚癌が生じやすくなることです。そのため、以前は日光浴が健康に良いと言われていましたが、今では逆に否定されているのです。                               

 

  では紫外線から身を守るにはどうしたら良いか。                    
 
 

 最も単純な方法は、帽子を被(かぶ)ったり、日傘をさしたり、長袖のシャツを着ることです。そして実は、昔のお百姓さんが被っていた帽子などは、実に合理的な、素晴らしい知恵のたまものであったのではないでしょうか。                          

  最近、紫外線から肌を守るサンスクリーン剤がいろいろ販売され、UVBに関してはSPF、UVAに関してはPAを表示されています。そしてその成分には、紫外線を吸収するものと散乱させるものの二つのタイプがあり、一長一短があります。どちらかというと、散乱させるもの(チタンなど)の方が安全性が高いようです。ごく最近化粧品会社などからSPFの値を見直そうという見解が出されました。SPFが高いから良いといったことはないのです。それだけトラブルも多いのです。                 
 


 

  むしろつけ方が問題。二〜三時間ごとにつけなおすことが大切です。サンスクリーン剤を一度だけしっかりつけたことで安心して、その後、やけどに近い日焼けを生じてしまった患者さんをよく経験しています。                           

  紫外線はビタミンDを作るのに必要であるという意見もありますが、それは一日十五分程度で十分なのです。むしろこの際、紫外線の皮膚への障害の方をしっかりと認識するようにしましょう。                                     


  私は趣味のゴルフをする時、夏でも長袖のシャツを着て、サンスクリーン剤を顔に塗り、帽子を被り、日傘をさしてプレイしています。つい最近までその姿は皆の笑いものでした。この頃では、そんな身なりでプレイする人達が増え、ようやく紫外線から肌を守ることが認識され始めてきたように思われます。                 

  しかし最も重要で、急がなくてはならないのは、オゾン層が破壊される現在の環境汚染や破壊を、なんとか皆さんの力でくい止めることではないでしょうか。新世紀を生きる子供たちを紫外線から守るためにも、とても大切なことです。