「眼囲皮膚炎」と「ジーパン皮膚炎」

      服部 瑛(はっとり皮膚科医院)

 

私が勝手に命名しているので、“聞き慣れる”はずもない。

「眼囲皮膚炎」1)は、眼周囲の左右対称性の発赤と落屑を主症状とし、その程度はさまざまである(図1)。圧倒的に女性に多くみられるごくありふれた皮膚病変である。目元の化粧が日常的になり、洗浄剤をより使用することにその原因を求めた。一つは、「石鹸のスカム」(水道水中に含まれるCaやMgイオンと反応してできた水に溶けない金属石鹸)か、もしくは「洗い過ぎ」によるどちらかであるだろうと推測した。その後の印象としては、スカムが出来にくい洗剤でも生じ得ることから、洗い過ぎの方が原因らしいとにらんでいる。ステロイド軟膏で軽快せしめ、プロぺトなどでコントロール可能である。

「ジーパン皮膚炎」2)は、1)臍部周辺に限局した慢性湿疹病変である、2)若い女性に多い、3)夏期に好発する、4)下着をつけず、ジーパンを履いた時に発疹する、5)ベルトのバックルが病変にあたっていることなどを特徴とする皮膚病変で、これもありふれた疾患である(図2)。江川先生が同意のご意見を述べてくださり3)、「ジーパン−バックル皮膚炎」という診断名を提唱された。その後、ジーパンでなくとも起こる症例(下着をつけず、バックルが原因)を経験し、さらにはジーパンの内側にある金属の鋲でも起こり得ることも知った。それらを考えると、やはり単純に「ジーパン皮膚炎」でよいのだろうと、今考えている。

どちらもありふれた皮膚病変なので、新しい病名などとは不遜にも思ってはいない。ただ私のカルテにはそのように記載して満足している。

日常診療の中には、まだ整理・記載されていない多くの皮膚病変が存在すると思われる。細かく分類する必要性はないが、こうした楽しみは、目で見えるという皮膚科の醍醐味なのであろう。

文献

1)                  服部 瑛,皮膚病診療,24:1159,2002

2)                  服部 瑛,VID,2:202,2003

3)                  江川清文,VID,2:504,2003