一般外来診療における疣贅の統計



 対象と方法

1993年6月から1996年6月まで、はっとり皮膚科医院を受診した疣贅
の患者2,257人を対象とした。
調査項目は前回とほぼ同様に、1)患者数および性別、2)月別の
患者数、3)年齢分布、4)疣贅の発生部位とその数、さらに、5)家
族内発生の有無、以上の5項目である。4)の疣贅の発生部位に関
しては、頭・顔面、手、足、その他の4部位に分類した。
なお、疣贅の中で臨床像が特別なもの、青年性扁平疣贅、糸状(指状)
疣贅、尖圭コンジローマなどの頻度も調べた。


 結果

 患者数と性別 1993年6月から1996年6月まで調査することができた
全患者数は2,257人であった。その内訳は女性1,210人、男性1,047人
であり、女性に若干多く認められた。
 月別の患者数  図1に示した。1993年6月の患者数が多いのは、6月
の新患患者に加え、それ以前より受診していた再来患者も加えたた
めである。図1のように夏期に患者数が多く、冬期に少ない傾向が
認められた。




 


年齢分布 年齢別を10歳きざみで調べると、図2のごとくであった。
年齢層を学齢別などでみると、0〜5歳の幼小児期:131人(5.8%)、
6〜12歳の小学生:744人(33.0%)、13〜15歳の中学生:116人
(5.1%)、16〜18歳の高校生:80人(3.5%)、19〜39歳の青〜壮年
期:672人(29.8%)40歳以上:514人(22.8%)であった。(図3)








 疣贅の発生部位とその数 2,257人全体での疣贅の発生部位では頭・
顔面:296人(12.2%)、手:586人(24.2%)、足:1,223人
(50.5%)、その他の部位316人(13.1%)であった(表1)。
その中で、手の疣贅の内訳は、手背:269人(45.9%)、手掌:317人
(54.1%)であった(表2)。
 
                                        





学齢別などでみた疣贅の発生部位の内訳は表3に示される。その中
で足の疣贅の占める割合は幼小児期:91人(61.5%)、小学生:
538人(67.3%)、中学生:73人(56.2%)、高校生:43人(46.2%)、
青〜壮年期:319人(45.0%)、それ以上:159人(29.3%)であった。
疣贅の種類としては、青年性扁平疣贅:71人(3.1%)、糸状疣贅:
57人(2.5%)、尖圭コンジローマ30人(1.3%)であった。



 

家族内発生 家族内発生は2,257人中226人(208家族)で、全体の
10.0%を占めた。その内訳は、夫婦間:12人(5.3%)、親子間:108人
(47.8%)、兄弟間:106人(46.9%)であった。

考按
 今回まる3年間で2,257人の疣贅の患者を集計することができた。男女
比では、女性1,210人に対して男性1,047人で、女性に多い傾向が認
められた。

季節的変動では、1993年6月を除外してみると、夏期に患者数が多く、
冬期に減少する傾向が比較的顕著に認められた。これは、疣贅の患
者が夏期に発症しやすいというより、むしろ相対的に皮膚科の患
者が夏期に多いことと符合する結果かもしれない。いずれにしても、
疣贅は夏期に診療することの多い疾患といえる。

 10歳きざみで年齢別にみると、明らかに疣贅の患者数は右下がりに
減少する傾向を認め、若い人に多い疾患であった。ちなみに、もっと
も多い年代は0〜9歳であり、28.4%を占め、次いで10〜19歳が20.5%
であり、両者を合わせると48.9%となり、20歳未満でほぼ半数を占め
る結果となった。また、別な角度から学齢別などでその分布をみる
と、小学生が33.0%と全体の3分の1を占める結果となり、疣贅の患
者は若い人の中でも、とくに小学生に多いという結果が得られた。

 疣贅の発生部位では、圧倒的に足の疣贅が多く、50.5%とほぼ半数
を占めていた。次に多いのは手の疣贅24.2%で、2つの部位を合わせ
ると74.7%となる。つまり、疣贅は手、足のように刺激の多い部位に
生じやすい疾患と考えられる。

 手に関しては、手背の45.9%に対して、手掌が54.1%であり、やはり
刺激の多い手掌に多いという結果が得られた。手背に認められる疣
状の小結節で代表される典型的な疣贅は、意外に少ないといえるか
もしれない。

 学齢別などでみた疣贅の内訳をみると、足の疣贅は幼小児期61.5%、
小学生67.3%を占め、他の部位に比べ圧倒的に多い事実を認めた。
しかしながら、年齢が長ずるにしたがい、足の疣贅が減少する傾向
が認められた。興味深いことには、それに伴って、全体として割合
の少なかった頭・顔面やその他の部位の疣贅が増加している。ちな
みに、40歳以上の頭・顔面の疣贅の割合は30.0%にも及び、その他
の部位は25.6%であり、足が29.3%であった。他方、幼小児期の頭・顔
面の疣贅の割合は1.4%、その他の部位が4.1%、さらに小学生の頭・
顔面3.4%、その他の部位7.5%という数字であり、より年長者におけ
る数字はより年少者の数字と比較して際立った違いが認められた。
つまり、小学生までは足の疣贅が圧倒的に多いが、年齢が長ずるに
従い、足以外の疣贅が多くなってくるという成績が確認できた。

 なぜ足の疣贅が小学生以下に多いかは、やはりスイミングが大きく影
響しているように思われる。つまり、プール内では足の角層が水分
で浸軟すること、コンクリート上を裸足で行動するため足底に小さ
な傷をつくりやすいこと、そして同一の場所を通行することあるい
は足を拭くことなどで、小学生以下の足の疣贅が多発するように推
察される。この点に関して江川は、上履きを共有する寮生に足底疣
贅が集団発生した事例を経験し、成熟ウイルス粒子が剥げ落ちる表
皮角層とともに外界に拡散され次の感染源となる間接ルートを想定
しており、興味深い報告と思われる。

 今回の調査でも、青年性扁平疣贅、糸状疣贅、尖圭コンジローマと
いった疣贅はきわめて少なく、一般の皮膚科診療においては特殊な
疣贅であると思われた。
 今回の疣贅の調査では、家族内発生は226人、208家族(10.0%)で
あった。夫婦間でのその頻度は少なく、親子間、兄弟間でほぼ同数
であった。

まとめ
 1)1993年6月から1996年6月まで3年間の疣贅の患者2,257人を調
     べた。
 2)年代別では20歳以下に多く、その中でも小学生に多く認めら
     れた。
 3)疣贅の部位では足の疣贅が多いが、ことに幼小児期、小学生
     に多いことが特筆された。年齢が長ずるに従い、他の部位の
     疣贅が増える傾向が認められた。
 4)小学生以下の足の発症にはスイミングが関係していることが
     推察された。
 5)疣贅の家族内発生は約1割で、親子間、兄弟間でほぼ同数であ
     った。

おわりに
 以上、一般の皮膚科医院における3年間における2,257人の疣贅の
現状について報告した。疣贅の統計は残念ながらなお少ないよう
に思われるが、一般の皮膚科医にとってわずかでも参考になれば
望外の喜びである。