フットケアについて

 フットケアの話題は、ごく最近第24回日臨皮総会・臨床学術大会(日臨皮学会)で
シンポジウムとして取り上げられた。神奈川県皮膚科医会でも昨年あたりから
何回もフットケアに関する講演会が企画されている。高齢化社会や糖尿病患者の
増加などから、ようやくフットケアの重要性が認識されてきたように思われる。

 そもそもヨーロッパなどでは、足は「全身を支える土台」あるいは「第2の心臓」
として考えられており、いつまでも2本足で歩けることがとても大切だと認識されている。
そして、イギリスを中心にしてポダイアトリスト、ドイツではフスフレーゲ、最近ではポトロジー、
さらにはフィンランドなどではメディカルフットケアなどの名称で、厳格な国家試験のもとで
足の専門医が養成されていることを、日臨皮学会で高山かおる先生(東京医科歯科大)から
教えていただいた。

 しかし、日本でのフットケアは今なおみすぼらしい現状である。皮膚科においても、
フットケアはなお未熟な分野であると思われる。そんな中、私の医院では偶然の
機会を利用して、1年程前からスウェディッシュ メディカルフットケアを週2回ほど行っている。
その内容は、
1)足浴、
2)爪周囲の角質除去、
3)爪切り、
4)足底の角質除去、
5)足のリフレソロジー、
6)セルフケアの指導などである。
足に問題のある多くの患者さんに喜ばれることが多い。しかし、私の医院での施術者は
医療関係者ではない。そのため、フットケアとフットキュアとの境界をわきまえなくてはならない。

 医師法17条によると、
「医療機関以外の場において、
@容態が安定し、入院が不要、
A容態の経過観察が不要、
B専門的な服用が不要」
などを満たしていれば、医師の確認の下でフットケアは実施可能である。
具体的には、「医師法17条注1.爪そのものに異常がなく、爪周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、
かつ糖尿病などの疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること
及び爪ヤスリでヤスリがけすること」などが挙げられる。
しかし医師法では、足底の角質除去やリフレソロジィなどに関しては全く触れられていない。
また「同注2.病状が不安定で専門的な管理が必要な場合は医療行為であるとされる場合がある」
と付記されているが、そもそもフットケアが必要な高齢者や糖尿病患者は病的な状態と紙一重で、
このあたりの見解も難しい。

 医師や医療関係者だけでフットケアを担えばよいように思われるが、むしろ医療関係者以外でも
フットケアができれば、より効率的となるだろう。
フットケアにおける医師や医療関係者は指導的立場で医療関係者以外のフットケア士と
連携する必要があり、そうした試みからフットケアの底辺が拡がっていくように考えられる。

 一方、適切なフットケアは、高齢者や糖尿病患者の医療費を軽減できることも知られている。
その際、もっともフットケアに身近と考えられる皮膚科医は重要な存在となってくる。
現在、倉片長門先生(スマイル皮膚科)、加藤卓朗先生(済生会川口総合病院)など数名の皮膚科医が
フットケアに携わっているだけの現状では底辺を拡げるには至らず、早急になんとかしなければならない。
最近発足したばかりの 「日本フットケア学会」の充実が求められるが、同時に同学会への
皮膚科医の参画も大切になってくるだろう。先ほど述べたように、皮膚科医が指導的立場で
フットケアの技術と理論を習得した専門家を養成できればこれにこしたことはない。
宮地良樹教授(京都大)が実践された「褥瘡」の時と同じように、皮膚科医がフットケアにおいても
イニシアチヴをとっていかなければならないと考えているのだが、いかがなものだろうか。

      はっとり皮膚科医院 服部 瑛