プロトピック軟膏にまつわる問題− その4


 平成14年10月26日、第66回東部支部学術大会のランチョンセミナ−で、
小林仁先生(小林皮膚科クリニック・札幌市)より「免疫調整軟膏の使用について」と題して、
プロトピック軟膏について講演する機会を与えられた。

 幸運にも、セミナ−前にお二人の先生から貴重なプロトピック軟膏に関する論文をご恵
贈いただいていた。

 一つは、山形市立病院済生館皮膚科の角田孝彦先生からである。その内容は1)、酒さ様
皮膚炎を呈した症例にプロトピック軟膏を使用して悪化する症例があり、調べてみると多数の
毛疱虫が認められたというものである。私も何例か同様症例を経験している。プロトピック軟膏
使用で悪化例の場合は、ぜひ調べていただきたい。

 もう一つは、神戸市で開業されている丸口幸也先生(まるぐち皮膚科)からで、プロトピック
軟膏を使用した509例中420例の血清K,BUN,Crを調べたが全例で腎機能に異常が
認められなかったというものである2)。したがってプロトピック軟膏の添付文書に記載されている
「2.重要な基本的注意」に関する腎機能検査の必要はないと結論された。正論であろう。
プロトピック軟膏は、一日10gに制限されているので、大量には使用できない。ましてや
顔面などに少量使用する場合、腎機能異常が起こるべくもない。この添付文書はすみやかに
訂正されて然るべきであろう。

 どちらも私には重要な情報であった。ここに改めて感謝したい。


 セミナ−講演の最後に、私は3つの提案を述べた。

 その1.プロトピック軟膏の使い方のコンセンサスが早急に作成されるべきである。たとえば、
プロトピック軟膏をどれくらいの期間連続塗布し、どの程度までの間欠塗布が妥当かどうか、
についてである。もちろん顔面と全身投与とでは、その使用法も異なってくるであろう。
他剤(ステロイド外用剤、保湿剤など)との併用についても検討しなければならない。

 その2.ちかぢか小児用のプロトピック軟膏が発売されると聞いている。その際私たち
皮膚科医は、この軟膏の使用に関してイニシアチブをとれるかどうかも大切な問題となろう。
調べた限りでは、小児科医と皮膚科医とは軟膏の使い方が全く異なっている3)。やはり
皮膚科医が、この軟膏の特徴・使用法などを十分に習熟し、小児科医に指導する立場になって
いなければならないと思われる。

 その3.現状では、“ほてり”感という副作用は仕方がないと思われるが、今後発癌性などを
含めて長期使用における副作用に十分留意しなければならない。そのための情報・検証には
細心の注意が必要で、皮膚科医そして製薬会社にはその重大な責務がある。いずれアトピ−
ビジネスは、この軟膏にステロイド軟膏で展開したと同じような中傷・誹謗を向けるはずである
(すでにこのことは現実となってしまっている)。


 私たち皮膚科医は、プロトピック軟膏を大切に使用していかなればならない。しかしながら、
同時にできるだけ早くこの軟膏の存在意義を確実にする努力を怠ってはならないのである。


         文献

1)木村 裕,角田孝彦,工藤和浩, 山形済生
館医誌,26:112,2001
2)丸口幸也, 日本皮膚アレルギ−学会雑誌,
10:87,2002
3)服部 瑛, 日臨皮会誌, 71:36,2002

         (高崎市 服部 瑛)