【アフリカへ行きました】
 
19)パークフィー
 
マサイ・マラ国立保護区はタンザニアとの国境に面する平たい菱形をしていて、西側1/3の辺りをマラ川がセレンゲッテイへ向かって南北に流れています。
マラ川で区切られた西側1/3の部分はほぼ3角形をしているので「マラトライアングル」と呼ばれ、マサイ・マラ国立保護区の中でも野生動物の宝庫と言われているところです。
私が滞在したロッジは保護区の北西に位置したオロロロ峠にあるので、朝夕のゲームドライブで国立保護区へ入るときはいつもオロロロ・ゲートを利用し、毎日主としてマラトライアングルを巡っていました。
保護区へ入るゲートは、このほかに5カ所あり、1つはタンザニアのセレンゲッテイ国立公園との国境に面し、他の4カ所はケニア側の北から東に掛けての保護区境界にほぼ均等に配置されています。
 
私たちを乗せたサファリカーが保護区内へ入るために、ロッジからの山道を下ってさらに草原の間を真っ直ぐに伸びる赤土の道を進みます。
この間2,30分ほど走ると前方に大きな門が見えてきます、オロロロ・ゲートです。
ここのゲートは観音開きになる柵状の鉄製扉でいつも閉ざされています。中央には大きな角が付いたままのバッファローの頭骨が2個飾られてました。ここのシンボルでしょうか。
ガイドのマコーリさんは門の前で車を止め、書類を持って管理人のいる事務室へ入っていきました。
門柱の一側には事務室が付属していて観光客の出入などを把握しているようでした。
反対側の門柱の建物は公衆トイレ(水洗)で、観光客に開放されています。
私たちも毎日利用させて頂いていました。保護区に入ってしまったらもうトイレはありません、ちょっと水の出が悪いのですがこの存在は有難いことこの上無しです。
 
この門を開いて貰うために私たち観光客は「パークフィー」を支払わなければなりません、保護区への入場料なのです。
ケニア以外の国から来た人は、ロッジ(キャンプ)1泊あたり 一人 30米ドルでした(2004年現在)。ケニア国民はこれより安いらしいです。
ケニアにおける貴重な外貨獲得の一端を担っているのだと思います。
一日に何回出入りしても金額は変わりません。私たちは朝夕2回出入りさせて貰っていました。
このゲートを中心に走る一直線の道を「オロロロゲート通り」と私は名付けました。
この辺りのメインストリートです、ヒトも動物も仲良く皆で利用していました。
 
     夕方、オロロロゲート近くのメインストリートを横切るヌーの群れ。
     横断歩道はありません、交通事故に気をつけましょう。
 
このパークフィーは当然マサイ・マラ国立保護区の運営・維持などに使われているのだと思います。
保護区の東側には野生生物局がありレインジャーや職員が常駐していて、密猟者の取り締まり、サバンナの掟を守らない肉食獣(たとえばマサイ族の放牧している牛を食べてしまうなど)に目を光らせ、他方、不幸にもケガや病気になった動物の保護をはじめ、保護区内の整備、道路管理などにあたっているとのことですから使途は沢山あると思います。
この保護区内で何人の人達が働いているのか聞き漏らしましたが、広いサバンナをどのようにカバーしていくのか心配でした。
マコーリさんの話によると、彼らガイドさんたちもクロサイ、チーター、ライオンなどの希少種については、見かけた時の様子や健康状況をナイロビの生物局へ毎日報告する義務があるとのことでした。皆さんがたの地道な努力が実る日が来るように心から願っています。
万一、病気・外傷などの動物が発見されたと言う報告を受けると、直ちにナイロビから飛行機で獣医さんが駆けつけるそうです。
飛行機で飛んでくる獣医さんのことを「フライイングドクター」と呼んでいるそうです。
始めて動物にも「フライイングドクター」制度のあることを知りました。
 
フライイングドクターはオーストラリアで有名ですが、旅行準備をしている時、ナイロビにも人間のフライイングドクターの制度があることを知りました。一人15米ドル(2週間につき)で契約しておくと、ナイロビのウイルソン空港から500キロ以内の圏内なら電話一本でナイロビの医療施設まで移送してくれるシステムです。
契約しようか迷ったのですが、私たちはみな成人の自称健康人なので加入しませんでした。
 
このように手厚い保護を受けているサバンナの動物たちは幸せだと言えるのでしょうか。
彼らが保護を受けざるを得ない状態に追いやったのは、もともとヒトが自分たちの利益だけを追求した結果なのだと思います。
今、過去の行為に対して代償を支払っている状態なのでしょう、しかも元通りになるかどうかはまったくの未知数です。
デイズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンなどの入園料に較べて、何もないだだっ広い原っぱへ入るのに、ひとり一日30米ドルのパークフィーを支払うのは、高いと考えるか、安いと考えるか、パークフィーを支払っただけで済ませてあとは知らん顔をしていて良い問題なのか。
今後の「ヒト」のあり方を考えさせられるパークフィーだったと思いました。