【アフリカへ行きました】
 
21)大きな虹
 
ガイドブックによると、マサイ・マラには日本のような四季はなく、標高の高い(1800メートル)こともあって一年中気温の変動は少なく、年間平均気温はおよそ18度とされていました。
実際に行ってみると、温度の日内変動が大きく、深夜から朝に掛けては日本の冬、日中は強烈な日射しなので半袖でも大丈夫でした。
ひなたではじりじり焼け付くような暑さを感じますが、一歩日陰へはいるとひんやりと涼しく、長袖を羽織りたいような気分でした。
そして、一年間が降水量の多い「雨期」と、雨の少ない「乾期」との分けられています。
雨期は3−5月(大雨期)と10−11月(小雨期)があり、私たちが出かけた8月は乾期の真っ最中にあたっていました。
確かにサバンナの背の高い草はみな枯れて金茶色に波打っていて、私が想像した通りの「乾期の景色」でした。
ところが、飛行機を降りてからロッジへ着くまでの道も、その後ゲームドライブで朝夕通る道も、保護区内のメインストリートも、地面はしっとりと湿り、黒っぽい色をしていたのです。所によってはぬかるんでいるところまでありました。
 
乾期のサバンナでは土は乾いてひび割れて、緑の草はさがすほどでショボショボ、とても埃っぽく、サファリカーに乗っていると埃まみれになるから相応の準備が必要だとガイドブックに書かれていました。
ところが、予想に反して道は湿っているし、金茶色の枯れ草の下には小さな緑の草がほとんど一面に生えていましたし、緑色にこんもり盛り上がったブッシュだってありました。
 
乾期なのに何故ぬかるみがあり、下生えの緑色の草があるのでしょうか?
その理由は、マサイ・マラに到着したその日に明らかにされていました。
マサイ・マラへの到着が午後だったので、その日はロッジで荷ほどきをして、その後コテージ内部のの探検をしていました。
「このソファは動物をイメージしてデザインされているけど座り心地がいまいち良くない」、「ここが寝室、ベッドには動物をデザインした飾りがついてて可愛いわ」、「あちこちに引き出しが沢山あり過ぎて帰りに忘れ物をしそう」などとお部屋の中をウロウロしていると、雨が降り始めました。驚きました、だって乾期というのは雨が降らないで一面が乾ききった状態になる季節だとばかり思っていました。
それなのに、いきなりの雨でした
 
ちょっと薄暗くなったかと思うと雨は唐突に降り始め、2,30分であっという間に止んでしまいました。さっぱりしたものです。
日本で言う「夕立」、こちらで言う「シャワー」です。
一気にお部屋の前の草や木々の葉っぱの先からしずくが垂れ、緑が鮮やかになりました。
 
雨が止んで明るくなり始めたので、バルコニーからサバンナの方を眺めると、とても大きな虹が見えました。
「まあ、虹だわ、消えないで消えないで」と呟きながら、クローゼットの中へ仕舞ったばかりのバッグ引きずり出し、カメラを取り出してバルコニーへ戻りました。
「アフリカで始めて見る虹なの、上手に撮らせて」と心の中で願いながらシャッターを切りました。
もの凄く雄大な虹でした、感激しました。
 
 
滞在中、ほとんど毎日のように夕方近くになると雨(シャワー)が降りました。
午後3時頃から6時くらいの間に、時間にしてほんの15分から30分くらい、シャーっと降ってまた直ぐに青空が戻ってくるのです。
日没前のシャワーはいつも置き土産に素晴らしく立派な虹を大空に描いていってくれました。
なんと言ってもマサイ・マラの草原にかかる虹なのです、信じられないくらいに大きいのです。
天空を横切ってもう一度草原に沈んで行くのでしょうか、バルコニーから反対側を確認する事はできませんでした。
アフリカの虹は、とにかく幅が広くて壮大なのです。
 
乾期の最中のサバンナで、まさか毎日のように虹を眺めることになるとは思ってもいませんでした。
サバンナの表面は金茶色の枯れ草で覆われていても下には緑色の草がしっかり生えていること、道路の表面が湿っていること、草原の中には所々に水たまりが出来ていることの謎が一気に解けました。このシャワーのお陰だったのです。
マサイ・マラが野生動物の宝庫だと言われる理由の一つがこの自然の恵みによるものだと納得できました。
虹の架け橋は、自然界のありとあらゆる動植物にとって明日への希望を約束するものに違い有りません。