【アフリカへ行きました】
 
22)シロサイ見つけたぞー!
 
マサイ・マラ国立保護区はゲートの内外を結ぶやっと車が2台すれ違える位のメインストリートとも呼ぶべきの土の道がほぼ直線に走っている以外、道らしい道は僅かしか有りませんでした。
それというのも、ここの国立保護区では道だけでなくてサバンナの中をサファリカーが自由に走っても良いらしく、何か目当ての動物を探す時はどの車もみな道を逸れて草の中へ入りこみます。
そして蟻塚を避け、ブッシュを迂回して縦横無尽に走り回りまわって動物を探すのです。
お陰で沢山の動物たちを本当に間近で見ることができたのだと思います
しかし、他の国立保護区あるいは国立公園では、決められた道から逸れることが禁じられているところもあると聞いています。
 
何回かのゲームドライブに出て、キリン、ゾウ、ライオン、チーターなどめぼしいものを見た後のことです。
朝のゲームドライブに出かける時、ガイドのマコーリさんが『今日はクロサイを探してみよう』と言いました。
それまでは特別の予告もなくドライブに出かけていたのに、この日はどこか意気込みが違うようでした。
シロサイは絶滅危機種となり国際自然保護連合などにより保護される立場になっています。
それというのも土地開発による生息域の減少、角は漢方の解熱剤として、中近東では短剣の柄の材料として珍重され、密猟されているために個体数が減ってしまったのです。
そのシロサイを探そうというのですから大変だと思いました。
 
メインストリートを外れて草原の中へ入って、道無き道を走り回るのですから終いに私は東へ向かっているのか南へを目指しているのか解らなくなってしまいました。
自分の家のようにサバンナの隅から隅まで知り尽くしているマコーリさんには造作もないことなのでしょう、どんどん車を進めます。
走っている途中で突然車を止めてシートの上に置いていた双眼鏡を手にとって辺りを眺め、また走り始めます。
アフリカやモンゴルなどの広い大自然に生まれ育った人は非常に優れた視力を持っていると聞いていたのに・・・双眼鏡を使うマコーリさんを目にして少し意外でした。
 
しばらく走ったり探していたりしていたと思ったら、いきなりまっしぐらに一点を目指してスピードを上げました。
お目当てのサイが見つかったのでしょうか。
サファリカーはぐんぐんスピードを上げたかと思うと、またいきなりスピードを落としました。
やっと私の目にも黒っぽい塊のようなものが見えました。
近づくに連れて、動物の形がはっきりしてきました。
マコーリさんが日本語で「サイです」と言いました、とうとう見つけたのです。
親子連れのサイでした。母子だそうです。
子供はまだかなり小さいです、しっかり母親の後ろについて歩いています。
夫が「あれは黒いからクロサイですか?」と尋ねると、「ノー、シロサイです」とのこと。
白・黒といかにも色で区別しているかのようですが、色の違いで呼んでいるのではなかったのです。
少し調べたところでは双方の違いはどうやら「唇の形」だけらしいのです。
それぞれが食べる草の種類が違うために長い期間を経て、唇の形が進化したためだと言われています。
つまり、シロサイは地面近くの草を、クロサイは比較的丈の高い草を食べているのです。
地面近くの短い草をたべるために唇が幅広くなったものがシロサイ。
「幅が広い」と言う意味の「wide」がいつの間にか「white」になってしまい、そこから「シロ」サイと呼ばれるようになったそうです。
これに対してクロサイの唇はとがり気味です。
シロサイもクロサイも身体の色では区別できなかったのです。
 
シロサイはマサイ・マラにはこの母子2頭しか生息していない、遭遇するのが大変難しいな動物なのでした。
オスは自分のテリトリーを持っていてずっとそこで暮らしています。
メスは繁殖期になるとオスの所へ尋ねていき、2,3週間とどまってから自分の居住区域に戻ってくるそうです。
この子の父親はタンザニア側セレンゲッテイにテリトリーを持っているので国境を越えての通い婚だとマコーリさんが教えてくれました。
子供は大体生下体重が50キロくらいで、生まれると直ぐに歩けるそうですから通い婚でも大丈夫なのでしょうか。
 
シロサイを目にするやいなや、マコーリさんは無線でせわしなく何か話し始めました。
相手も何か問いかけているようです。どうやら他のサファリカーの仲間達にシロサイを見つけたこととその場所を連絡しているようでした。
間もなく、続々とサファリカーが集まって来ました。
私が滞在しているロッジの車だけではなくてあちこちのロッジの車です。
ジープのような形、頭の上に天蓋のついたもの、天井部分のシートを巻き込んだものなどいろいろです。
ロッジによってサファリカーの形がちがっているので、まるでサファリカーの品評会のような具合になりました。
 
サファリカーに乗っている時、いつもマコーリさんが無線のスイッチを入れっぱなしにしているわけが解りました。
比較的珍しい動物を見つけると直ぐに仲間達に連絡を取るのです。ガイドさん同士、互いの連絡はとても密なようです。
お陰で私たちもいろいろな種類の動物を見ることができたのです。
それにしてもガイドさん・運転手さんの連携プレーは、マサイ・マラを訪れた観光客に少しでも多くの動物を見せたいと言う熱意が良く伝わってきて嬉しいでした。