【アフリカへ行きました】
 
27)ロングドライブの日 (その1 ヒッポ・プール)
 
マコーリさんの提案で「ロングドライブ」に出かけることになりました。
「ロングドライブ」とは通常行われている朝夕のゲームドライブの代わりに、早めの7時に朝食を済ませ、8時からお弁当を持って一日がかりのサファリに出かけることです。
滞在しているロッジはオロロロ峠にあるため、朝夕のゲームドライブの限られた時間では、動物保護区までの往復時間を含めると、どうしてもサバンナの遠い端まで足を伸ばせないこともあるからだそうです。
区域によっては地勢も異なり、住んでいる動物の種類も多少違うのかも知れません。
いつも、オロロロゲートからマサイ・マラ国立保護区へ入り、ゲートに近い北西部辺りの部分を中心に見て回っていたわけです。
その辺りは野生動物の宝庫と言われるマラ・トライアングルの一部なので数多くの動物に出会い、私は充分に満足していました。
でも、お弁当を持ってのお出かけだと聞くと、まるで子供のようにわくわくしてきました。
 
出かける時はいつものランドローバーで、門番さんの『ジャンボ、ジャンボ、ジャンボ、ジャンボ』と4人分の挨拶の声に送られて出かけました。
お天気も上々ですし、私も日焼け止めクリームを塗り、帽子、長袖の上着を準備しました。そうそう水分補給のミネラルウオーターも忘れずにしっかり持ちました。
日中の日射しは大変強烈なので車の屋根を上げて顔を出すだけですが紫外線避け・グッズ絶対必要です。
ドライバー兼ガイドのマコーリさんも心なしかいつもよりのんびりと車を運転していて、斜め後ろから見える横顔にもゆとりの表情が窺われます。
 
今までサファリカーで走り回っていたところはどちらかというとマサイの草 レッド・オーツ・グラスが絨毯を敷き詰めたように一面に生えていました。
しかし、車を進めるうちに、草の生えているところと土が剥き出しになっている部分がまだらに入り交じっていたり、全体の草丈がとても短いものばかりのところ、あるいはスイカくらいの大きさの黒っぽい石が草の間にゴロゴロ転がっているところも見受けるようになりました。
地面の状態が微妙に変わってきていることが感じられました。
それにつれて、ゾウ、キリン、シマウマ、トムソンガゼル、ヌーなどお馴染みの草食動物の他にも オオミミギツネとかウオーターバック、トピなどと、今まであまり見かけなかった動物たちにも出会うようになってきました。
一口にサバンナとは言っても地域によって大地の状態が違うこと、それに応じて動物たちもある程度棲み分けして、多種類の草食動物たちが上手に仲良く暮らしているのかも知れないと思いました。
 
  
   寄り添っている二匹のオオミミギツネ。耳が大きいので可愛く見えるのですが、顔はそれほど
   可愛くありません。日本名はオオミミギツネですが、英語を直訳するとコウモリミミギツネ
   bad eared fox となります。そう言われるとそのようにも見えます。
 
車を進めるうちに、前方にこんもりした木々がベルトのように並んでいるのが見えてきました。
今まで目に入る景色と言えば、枯れ草の原にポツンポツンと木が生え、蟻塚がムックリしている光景ばかりで、せいぜい遠くに見えるのはなだらかな丘のような隆起が延々と続くだけでした。
今度見えてきたのは明らかに緑の濃い木々が並んでいるところです。
マラ川に近づきつつあるのです。川辺に沿って帯のように木が生えているのでした。
マコーリさんが目指している行き先が何だか解ってきました。
水と関係のある動物と言えば・・・そうです、きっとカバがお目当てなのだと思いました。
このマラ川には、カバが住みついて、いつもたむろしている「ヒッポ・プールhippo pool」があるのだとガイドブックに書いてあったのを思い出しました。
 
   手前の金属製のものは橋の欄干です。
   このときカバは川の向こう岸あたりにたむろしていたので、この写真ではその頭と背中が
   まるで岩か石のようにしか見えません。
 
やはり、「当たり」でした。マコーリさんは、カバを見せようとここまで連れて来てくれたのでした。
このヒッポ・プールと言うビューポイントは、サバンナの中でサファリカーを下車してもよい唯一の場所とされているところです。
上の写真では向こう岸近くに見えるチャコールグレイのゴロゴロしている塊がカバ達なのです。
10匹近くいたでしょうか。反対岸に集まっていたのが何とも残念でした。
身体の上半分、背中と頭が見えているだけですが、これはまだマシな方です。
通常、カバは昼間のほとんどの時間を、水面に鼻先だけ出して昼寝をしているか、のんびり寛いでいるだけなのです。
水に潜る時はぱたんと閉じられる便利な耳を持っています。
彼らが活動する時間帯は夜だと言うことをこの日初めて知りました。
眼が良いのでしょうか、暗闇は彼らの世界と言うことなのでしょうか。
夜になると、昼間とはうってかわって、活発に動き回ったり食事をしたりするそうです。
大人のカバの体重は2−3トンはあると言います。
その体重で活発に活動し、崖を駆け上ったりすると聞いて驚きました。
地響きをたてて戦車のように移動するのでしょうか、それとも子鹿のように軽やかに走るのでしょうか。
彼らの動きはいつでもノッシノッシとおっとりとしたものだとばかり思っていました。
「活発?」、「崖を駆け上る?」
うーん、あの大きな体で、あの短い脚で走り回る姿はとても想像もできません、にわかには信じがたいです。
そして、カバは分類上ブタの仲間だと言うことも、この年になって初めて知りました。
確かに顔つきと体型は似ていますが・・・・・それぞれどのように環境に順応して進化してきたのでしょうか。
サバンナには知りたいことがまだまだいっぱいあります。