【アフリカへ行きました】
 
28)ロングドライブの日 (その2)密入国?
 
ヒッポプールに着いたときカバはマラ川の中に居たのですが、ちょうどくつろぎの時間だったとみえて、残念ながら『カバは必要に応じて活発に動く動物である』事を実証してくれませんでした。
少し心残りです、いつの日か『崖を駆け上るカバの勇姿』をぜひ見たいものです。
 
ヒッポプールを後にして車は進みました。
この界隈は比較的幅の広い道で、しばらく行くと木陰に開放的な小さな建物が見えました。
中にはカーキ色の服を着た現地人と思われる方が2,3人居るようでした。
マコーリさんが車から降りて、建物の中へ入っていき、そこの人達と何か話を交わしていました。
戻ってくると、
     『ここはタンザニアとケニアの国境です。彼らは車から降りても良いと言いました』
 
まあ、ここはタンザニアとの国境だったのです。
ケニアのマサイ・マラ国立保護区はタンザニアのでセレンゲッテイ国立公園と地続きですから、ここがその境界線上の一カ所に相当しているのでした。
これは記念すべき出来事です、「降りるな」と言われても降りてみたいところです。わくわくして車から降りました。
 
建物の傍の道は少し広がってまるで広場のようになっていました。
草一本生えていないきれいに整えられた広場の中央に高さ1メートルほどの三角形をした石の柱がありました。
何と、これが国境の印だそうです。
上面の頂点に当たるところには 縦線を挟んで左右に《T》と《K》と彫られ、その下には《21−2》と刻んでありました。
《T》はタンザニア、《K》はケニアの頭文字で、頭文字の間に刻まれた縦の線が《国境線》を示しているのです。
下の数字は国境目印石の通し番号だと思われます。
何と簡単な国境なのでしょうか。
バリケードも無ければ検問所や遮断機のようなものも勿論ありません。
それはそうです、野生動物たちの自由世界です。このようなところでは、境界線を引くこと自体がまったく無意味なのです。
動物たちは単に、この広い大自然の中で暮らしているに過ぎないのです。
「国境」と言う線を引いて互いにいがみ合うのは人間くらいです。
 
私たちは無邪気に、国境の刻印のある石の《T》側と《K》側に交互に立って記念撮影をしました。
その時、ふと思い出したのです、私は今日パスポートを持ってきて居ませんでした。
考えてみたら、マサイ・マラへ来てからドライブゲームに出かけるとき一度もパスポートを携帯せずに済ませていました。
もしかするとあの小屋にいたお兄さんたち、国境警備隊の隊員さんだったかもしれません。
一瞬ドキッとしましたが、咎められることもなく無事にタンザニアへの密入国(?)を果たしました。
 

    タンザニアとケニア国境の目印の石
 
今日はまる一日掛かりのサファリなのでさらに車はさらに奥へと進みました。
 
サバンナに出ていると、ほ乳類以外に、いろいろな鳥たちを観察する事もできました。
私自身の目線がいつも金茶色の枯れ草の原に向いていたからでしょうか、かなりの種類の鳥が地面を歩きまわっていることに気がつきました。
ふだん私が街中で見かけるスズメ、ハト、オナガドリ、カラスなどは大体いつも枝や電線などに留まっているか空を飛んでいます。
また秋になると、刈り入れの終わった田圃で虫や落ち穂をついばむ鳥を見ることもあります。
でも、たまに道路に舞い降りている鳥でも、私が近づくと直ぐにパタパタと飛び立ち、私と同じ平面を歩いていることなど滅多にありません。
ここの鳥たちはまったく違うのです。空を飛んでいる、あるいは木に留まっている姿より草原を歩いている事の方がずっと多いように思えました。
サファリカーがある程度近づいても飛び立とうとはしないで歩いているのです。
まったく無視されているのでしょうか、危害を加えない動物だと学習したのかどちらかだと思います。
 
    接写できなかったのではっきり解りませんが、昔の書記が羽ペンを耳に挟んだような
    ヘアスタイルをしているところからセクレタリーバード(secretary bird)という英名です。
    でも、日本では何故かヘビクイワシという名前です。
 
頭に羽ペンを刺したようなセクレタリーバードはなかなかユーモラスで可愛い格好、羽の色もなかなかモダンで素敵でした。
日本では食用としてよく知られているホロホロチョウも、群れを作ってで草原を歩いていました。見かけは土のような色でとても地味でした。アフリカ原産であることを初めて知りました。
この辺りで見かける鳥の中で、なかなか飛び立たとうとしないのがフランコリンという太ったハトのような小鳥でした。いつまでもどこまでも歩いています。
やや青みがかった地味な灰色の羽で、短足です。これも群れを作っていました。
 
ここでは鳥たちも、地上を生活の場の一部として暮らしている事に改めて気づきました。
都市部で見かける鳥たちも、昔は地上でも暮らしていたのかも知れません。
もしかしたら私たち人間が都市部に暮らす鳥を地上から追い払ってしまったのでしょうか。