【アフリカへ行きました】
 
35)ペアの動物たち
 
サバンナでは、集団から離れて1匹あるいは2匹だけでいる動物を見ることは本当に少なかったのです。
日本のヒトの社会では核家族化や少子化が進み、少ない家族数で暮らしている家庭が年ごとに増えているように思います。
まさか、サバンナの動物たちの間にその風潮が浸透しているわけではありません。
サバンナは「喰うもの」と「喰われるもの」の世界です。
「喰うもの」の立場から見ると、単独行動をしているか弱い草食動物ほど狙いやすいものはないと聞きます。
そこで、ほとんどの草食動物は、自衛上団体行動をとって暮らしているのです。 
 
最近日本の動物園でも、野生動物をなるべく自然に近い状態で観察して貰おうという観点から、サファリパークとか、自然動物園などの名前で呼ばれる広い施設が出来、それぞれに工夫を凝らした飼育法をとっているようです。
でも、私が子供の頃に行った上野の動物園は、どちらかというと動物見本市のようなものだったように記憶しています。
小さな四角い檻の中で少数の個体がウロウロしているだけのものが多かったと思います。
檻の中には岩のようなものが申し訳程度に置かれていたかも知れませんが、よく覚えていません。
野生動物の色・形・大きさなどは解りますが、これでは生態を理解するにはほど遠い状況でした。
そのような環境で育った私ですから、サバンナで多種類の動物たちがそれぞれ集団で行動する様子に目の当たりにしてちょっと驚いたのです。
頭数の少ない場面を経験していたので、潜在意識下で、1匹か2匹の動物を期待していたのかも知れません。
 
マサイ・マラにいる間、2匹だけでいる動物を私が目撃したのは、「チーター」、「オオミミギツネ」、「トムソンガゼル」の3組だけでした。
 
この2匹のチーターは若いオスの兄弟で、ここマサイ・マラではちょっとした有名人(?)らしいです。
彼らが生後間もなくの時から、ずっと見守り続けてきているガイドのマコーリさんが
     『彼らは若い兄弟チーターたちです』
ズバリと言ってのけたからには、きっと個体識別が出来ているからでしょう。
この兄弟チーターたちは、今日までの間に一体何人の人々にこうして紹介されてきたのでしょうか、きっと数えきれないくらいだと思います。
親離れはしたものの、まだ独立して結婚するには至っていない年頃・・・。
2匹が寄り添っていて、とても仲良しのように見受けられました。
近い将来には独立して、それぞれ自分の縄張りを作り、別れ別れに暮ら運命、それまでの期間です。
束の間の ”仲良しチーター2匹組” と言うところでしょうか。
    私たちが見ている間中、互いに先になり後になりしてうろうろしていていました。
     目的も無く、ただじゃれ合っている様子でしたから、見かけよりは幼いのかも知れません。
 
 
ペアでいた動物の中で、このオオミミキツネが一番印象深く、眼を惹きました。
草丈の短い草原で、まるで「私たち、離れたくないの」とでも言うように二匹が身をよせ合って坐っていたのです。
強い直射日光の下で、寒いはずがありません。仲の良いことこの上なしと言うサンプルのような二匹でした。
このオオミミギツネがもう大人なのか、まだ子供なのか解りませんが、大人であれば体長5,60センチ程度と言いますからサバンナでは結構小型の動物です。
辺りを見回しても仲間がいる様子も無いし、隠れる場所もなく、あまりに無防備なのでもしも空腹のライオン、ジャッカルなどが来たらどうなることかと心配でした。
たった2匹で本当に大丈夫なのでしょうか。

    2匹のオオミミギツネ。     
    可愛らしく2匹でくっつきっこをしています、きっと仲良しなのです。
 
 
このトムソンガゼルのペアを見つけた辺りは短い草の原でしたが、彼らは草深いところやブッシュの近くなど、どこでもよく見かけました。
体高が60−70センチ、体長が1メートル前後ですから、オオミミギツネより少し大きいくらいです。
臆病で、脚がとても早いです。近寄ろうとするとあっという間に飛び上がって逃げてしまいます。
肉食獣から身を守るためにも、彼らはいつもは群れを作って行動しているので2匹だけ群れから離れている光景は初めて見ました。
写真では、この2匹だけしかいないように見えますが、実は右手の数十メートルほど離れたところには沢山の仲間がいたのです。
厳密に言うと、「グループから離れて坐った2匹」と言うところです。
何故かこの時は、ある程度車が近づいてもジッとしていてくれたのでカップルの写真を撮ることが出来ました。
2匹が皆から離れたところに腰を落ち着けている様子は、何やら意味深長です。
恋人同志でしょうか。それとも新婚さん?
いずれにしても、周りの目が気になるので、みんなから少し離れたところで愛を語っているのでしょうか。
    ペアのトムソンガゼル。恋人か、親子・夫婦・兄弟か解りませんが仲良しのようです。
    実は彼らから離れたところに沢山の仲間がいるのです。
 
動物たち、特に草食動物は「群れを作る」のが当たり前で、1,2匹が離れていることは致命的状況に陥らないとも限りませんから、これらの場面を見るのはかなり稀であると言うことを学びました。
多くの動物は、自分たちの種類だけの単独グループとは限らず、シマウマとヌーの組み合わせとか、そこへさらにトムソンガゼルが加わるなどと、多種類の動物たちが共に行動していることもかなり多いでした。