【アフリカへ行きました】
 
45)旅の総決算 その1
 
1)飽食の果て?
 
旅に出ていなくても、毎日3度きちんと食事をしている私ですが、マサイ・マラにいる間は模範的に規則正しい生活をしていました。
それも、早寝早起きで文字通り 『朝(あした)に星をいただき、夕べに星をいただく』 に近い暮らしでした。
そりゃあそうです、およその日課がありますからもたもたしてはいられません
朝は決まった時間に起きて朝食前のゲームドライブに出かけ、日中は特別な計画(その他のアトラクション)でも無い限り、お部屋でちょっとした洗濯をしたり、絵はがきを書いたりしてのんびり時間を過ごしました。
夕方のゲームドライブから帰れば間もなく夕食、そしてシャワーを浴びて「お休みなさい」です。
 
多分、夏休みを日本で過ごしていたのではそうはいかなかったでしょう。
日本では、一応都市での生活です。
まして夏休みともなれば「音、光の氾濫」、「文明という名の数々の誘惑」、「雑事・家事」、「趣味・娯楽」に振り回されて、規則正しい生活は到底無理だったと思います。
一番の弱点は、精神的にだらけてしまって、最低の基本である日常の食事の支度すら「ああ、面倒だな」という気持ちが先に立ってしまったかも知れません。
 
何と言ってもマサイ・マラでは、3度のお食事を毎日ほぼ同じ時間にしっかりいただいていたことは特記すべきでしょう。
それが、支度・後片付けどすべてが自分の手を煩わせることなくいただけるのですから最高に嬉しいです。
自家栽培の生鮮野菜やさまざまなトロピカルフルーツなど、サバンナのまっただ中とは思えないくらい豊富な食材でした。
振り返ってみますと、とてもバランスのよいメニューを出していただいていたと思います。
我が家の朝食は一年を通じて、季節のフルーツ(リンゴとグレープフルーツが主です)とヨーグルト、バタートースト、紅茶またはコーヒーという簡素なメニューです。
それに較べると、こちらの朝はアメリカンブレックファーストのスタイルでとても豪勢です。
ジュース、フレッシュフルーツ、シリアル、今までに経験したことのない黄色くない黄身(黄身と呼ぶのかどうか疑問ですが・・・)の卵料理とソーセージやベーコン、自家製のパンなど、そして仕上げは紅茶かコーヒー。
不思議に3度の食事時間には、ちゃんとお腹が空いていますので、意地汚くすべてコース通りにいただいていました。
 
朝、あれほどしっかりいただいたのに、昼食もまたお腹の中にきっちり収まります。
昼食はほとんどビュッフェスタイルで、最後のコーナーでは、目移りして選ぶのに悩むほど豊富でカラフルなデザート群が並んでいました。
とにかく目と鼻と頭とが、まずノックアウトをうけてクラクラしてしまいます。
好みのものをお皿に取り分けてテーブルに戻り、おもむろにお腹をなだめるのです。毎日とても幸せな思いをしていました。
ここまでお話しすれば、夕食だって・・・・・、自ずとおわかりいただけると思います。
 
昔から 「腹八分目」 と言う言葉があったことすら忘れて 「目一杯・腹一杯」いただいていたのです。
それを1週間毎日続けてしまったのですから驚きです。
 
そんなわけで、帰国して体重計に乗るのが躊躇われました。
勿論私だけではありません、家族全員にとって帰国後一番の関心事は体重でした。
「怖いもの見たさ」です、思い切って、目を閉じて体重計に乗ってみました。
恐る恐る針の位置を確かめます。
 
「えっ?」
「あらっ!」
「うっそお!」
「ちょっと、それって間違いじゃないのおっ?」
 
音にならない言葉がこぼれ、頭の中で感嘆符{!}と疑問符{?}が渦を巻きます。
もう一度体重計に乗り、目盛りの上を行き交う針の行方を確かめてみました。
間違いではありません、体重計の針は出かける前日の時とまったく同じ所を指していたのです。
それが私だけではありません。家族全員多少のずれはあっても旅行前後の体重に大きな変化が見られなかったのです。
体重は後で、ジワジワ増えるかも知れないと思い、1週間後、2週間後とフォローしました。
でも、体重計の針はふらつくこともなく不動の姿勢を守り、結局1ヶ月過ぎた後も同じでした。
 
体重増加を覚悟していたのですが、これは一体何がどうなったのだろう、と皆で考えました。 
    1.量は多いが、脂肪分が思っているより少なかった。
    2.食材豊富なバランスの良い食事だった。
    3.きれいな空気の中で暮らしていた。
    4.規則正しい生活だった。
    5.仕事のストレス、都市部における喧噪のストレスが無かった。
    6.毎日、オフ・ロード・カーで揺られたことが適度な運動替わりになったのだ。
 
幾つでも理由らしいものは列挙できますが、我が家での結論は(6)が有力です。
(1)から(5)までの理由は、短期間で結果が出せるような条件とは思えないからです。
毎日5,6時間はガタゴト道を揺られていました。この理由が一番私たちにとって納得できるものでした。
こんなに簡単なことで”飽食の付け”をかわすことが出来るのなら「太りたくない大食漢」にとってはこの上ない朗報でしょう。
現在の日本では、完備された道路が広範囲に行き渡っていますから、同じことをして裏付けを取ることは出来ないかも知れません。
 
列記したものはいずれもいい加減な推論であって、今日まで正しい結論は見出されないままです。
何はともあれ、あれだけ飽食の日々を過ごしたと言うのに、家族全員に体重増加は無かったのです。
みんな体型は出発前とほぼ同じ、着られなくなる洋服の心配もなく、まずは「めでたしめでたし」でした。