【アフリカへ行きました】
 
16)バルーン(熱気球)に乗ります
 
出発前、日本にいる間にバルーン(熱気球)でのサファリを予約しておきました。
バルーンに乗る機会なんてそうざらには無いことです、今を逃したらいつチャンスに恵まれるか解りません。
オプション観光なので、普通はロッジへ着いてからの手配で良いらしいのですが、なんと言っても北半球は夏休みの最中、サファリは隠れた人気があるらしいので予め日本で手配しておいて正解でした。
前日に申し込んだ人は「希望者が多くて数日後になる」と言われていました。
動物と同一の平面で見る世界ではなくて、鳥瞰図で見たらどうか、動物たちの行動やサバンナの有様はどのように見えるのでしょうか。興味津々です。
 
バルーンは温度差を利用して空中に舞い上がるのですから気温の上がる前、早朝の出発になります。
朝のゲームドライブの時よりさらに一時間早く、5時にロッジを出ました。
途中で別のロッジによって日本人客のカップルを拾って、「ガバナーズキャンプ」と言うロッジが主催しているバルーンの出発広場へ行きました。
広場では2機のバルーンの周囲にライトをつけて人々が忙しそうに動き回り、出発の準備中でした。
傍にはテーブルが用意してあって、集まってきた乗客に暖かい飲み物とビスケットを勧めてくれます。
寒い薄暗闇の中、集まってきた人々はビスケットをつまみながら熱いコーヒーを頂き、準備の一部始終を見守ります。
 
地面に横たわったペチャンコのバルーンに、巨大な扇風機がどんどん空気を送り込みます。
バルーンはまるで子どもが膨らませるゴム風船のように徐々に膨らんでいきます。あんなに大きなものにどんどん空気が入り、バルーンの形ができあがっていきます。
ある程度なで膨らんだところで、いよいよ中心部にあるバーナーに点火されました。
ごうごうと言う凄い音がするのと同時に大きな炎の輝きでバルーンの中が明るく照らし出され、「ああ、いよいよだわ」と言う気持ちの高揚を誘います。

 
バルーンのキャビンは籐のような植物を編んだ籠状のものでこれもバルーンと同じように横倒しになっていました。
籠(キャビン)は大きく3等分されていて、中央がキャプテンとガスなどの機材の場所、左右はそれぞれ上下2段3列で6つのブースに仕切られていています。
つまり、機長を挟んで左右に6人づつ乗り込む12人乗りのバルーンということになります。
1人の専有面積は窮屈というほどではなく、くるりと1回転出来る程度の広さで、ここに2人一緒には到底入れそうもない程度の大きさです。
この日、実際に乗り込むまで、バスケット状のキャビンの中はしきりなど無くて人々が自由に移動できるのだと思っていました。
でもよく考えてみると、皆が一斉に眺めの良い方へ移動したらバルーンはたちまちバランスを崩すに違いありません、大事故に繋がります。
一人ずつ区切られているのは当然のことでした。
 
中の空気を暖めはじめるのとほぼ同時にキャビンへの乗り込みが始まります。
籠(キャビン)が横倒しになった状態のままで、それぞれ乗り込むというよりむしろ潜り込みます。
全員が潜り込まないうちにバルーンが飛び立ってしまわないように何人もの係員がキャビンを抑えながら手伝ってくれます。
 
   一足先に離陸したもう1機の乗客たちが私たちに手を振っています。
    私たちのキャビンも立ち上がりました。正面を向いている人は
    キャビンを抑えてくれている係の人です。
 
 
機長はデーヴィッドさんと言うカナダの方です。やや太り気味の豪快な声の持ち主です。
機長が言います。
 『ハーイ! みんな、おはよう。いよいよこれから飛び立つよ。まず上段に乗る人、枠に掴まって足から先に籠の中に入れていこう。しっかり奥 まで入れ。できたかい? そしたら次は下段の人だ。どんどん潜る、足が一番下に着くまで潜れ。
 潜れたよね。そしたら胸の辺りにリング状のロープがあるから、僕がいいと言うまでみんなそれにしっかり掴まっているんだよ。さあ、これからいよいよ飛ぶぞ!。』
私は下段です。よいしょよいしょと下まで潜っていったら、おしりの辺りに小さな椅子のような出っ張りに突き当たりました。
肩と頭は冷たい泥の上に乗っていますし、すぐ目の前には上段の人の頭が宙に浮いています。
ちょっと苦しい格好ですがこれで出発準備はOKです。
 
ガスバーナーの燃える音はもの凄いです。「ボーボー」でなくて耳の傍で「ゴーゴー」です、他の音は何も聞こえないくらいです。
中の空気が充分暖められると、今までだらっと地面についていた風船がいきなりムクッと立ち上がります。
それと同時にキャビンもすっと縦になり、私たちもやっと直立姿勢になれました。
少し離れたところで一足先に離陸したもう1機のバルーンが、僅かに明るくなった上空で虹色を鮮やかに見せています。
私たちのバルーンももう地面を離れたでしょうか。
音のすさまじさに較べると、動きの方はとても静かなので離陸の瞬間が分かりません。
気が付いた時にはもう大地がかなり下の方に見えました。
さあ、バルーン・サファリが始まります。

  私たちのキャプテンは一生懸命バーナーの調節中です。
  写真を撮った直後、地上でキャビンを抑えていた係員たちが一斉に
  手を離しバルーンは離陸しました。