アフリカへ行きました
 
 7)アフリカン・ビッグ・ファイブ
             ――マータイさんのノーベル平和賞受賞をお祝いして――
 
この章はもう少しあとでご報告しようと思っていたものです。
 
しかし、10月9日の新聞で、2004年のノーベル平和賞が『ケニア』の環境活動家マータイさんに決定したと掲載されました。
この夏にケニアへ行ってその大自然に直接触れたばかりの私にとって、これは単なる偶然以上の出来事でした。
そして、マータイさんの受賞に対してお祝いの気持ちをこめて、急遽順番を替えた次第です。
マータイさん、受賞おめでとうございます。
 
受賞の理由は「植林運動を育てたこと」に対してだそうです。
マータイさんは今の森林保護の運動を、30年前にたった8本の木の植林から始めたそうです。
森林の砂漠化防止のために植林を行う、しかも貧困女性の力を借りることによってです、彼女たちも潤いがえられるというもの。
マサイ・マラで私が出会ったアフリカン・ビッグ・ファイブの動物たちの中にも、その他の動物にも居住域の分断あるいは狭小化、さらには密猟などによって個体数が減少しているものもいます。
私がマサイ・マラで、ほんの少しばかり垣間見た状況を交えて報告します。
写真は、私が出会ったビッグ・ファイブです。”ファイブ”とはいうものの、実際に会えたのは4種類でした。
始めてのデジカメ写真、とてもお目にかけられるようなものではありませんが、証拠写真だと思ってみて下さい。
 
その昔、1種のスポーツとしてハンテイングが盛んに行われ、ヨーロッパではリゾート地としてのアフリカが有名だったらしいです。
そして、もっとも危険で、どう猛とされる動物を倒すことが優秀なハンターとされ、仕留めた動物は彼らにとってトロフィーでもありました。
どう猛で、比類無く強い捕食動物と、最大の草食動物5種を選びこれを「ビッグ・ファイブ」と呼ぶようになりました。
今ではここを訪れた観光客が「ビッグ・ファイブ」全部に会うことが出来たら、それはこの上なくラッキーなのだと聞いています。
 
《アフリカライオン》
 
1匹で食事を終わったライオンです。これから日陰で             
  お昼寝でしょうか。  
 


メス、オス、子供、家族がみんな集まって団らん中。
まだ、一生懸命食べている子供ライオンもいます
 
野生のライオンと言えば、以前はオーストラリアと南極を除く全大陸に生息していましたが、今ではアフリカとインドにしか残っていません。 
人間の進出に伴う生息地の縮小・分断によって個体数が減少していると聞きました。 
その昔、マサイの男性は一人で槍を使ってライオンを倒すことが、一人前の男子と認められる条件でした。
今ではそのような行為は行われず、ライオンは保護される立場になっています。
今回こちらに滞在中、私たちは毎日ライオンに会うことが出来ました。時には朝夕2回も見まかけました。
ある時は「一匹狼」ならぬ「一匹ライオン」、別の日には複数の雌雄と子どもライオン家族でした。
マサイ・マラではライオンの個体数は比較的多いのではないかという印象を受けました。
それに、私が彼らに会う時は仕留めた獲物を食べている最中か、食べ終わって満腹でのんびりひっくり返って寝転がっている姿でした。
空腹でやせ衰えたライオンには会いませんでした。時間的(夜間ではない)にもライオンが草食獣を倒すところは見られませんでした。
今回は、ここでは何日も食べられずに空腹を抱えているという様子のライオンはいませんでした。
 
《アフリカゾウ》

  ゾウはいつも沢山の仲間と移動していました。
  老いも若きも一緒です。

 
   隊列の先頭を歩くゾウ。
 立派な耳と鼻で、威風堂々としています。 


ゾウは、アフリカゾウとアジアゾウの2種類があります。
マサイ・マラにいるのはアフリカゾウで、これは地球上の草食動物の中で最大のものです。殆どがサバンナに住んでいます。
アジアゾウに較べて身体も大きいですが、耳が大きくて太い血管があるので耳をひらひらさせることで体温を下げる効果があります。
日中の暑さをこれで凌いでいるのでしょう。
右の写真のゾウの耳をご覧下さい。ちょうど耳を広げたところです。とても大きな立派な耳でしょう。
耳を広げると、アフリカ大陸の形そっくりになります、とても面白いです。
アフリカゾウだという印として神様が作られたかのように思えます。
ここでは、ライオンとともにゾウにも良く出会いました。大体いつもファミリーあるいは大群で移動しているようです。
テレビのコマーシャルで、尾と鼻をつないだ親子が写されますが、残念ながらそのような光景に出会うことはありませんでした。
マサイ・マラ国立保護区の中であれ外であれ、どこにでもいるようです、ロッジの門の直ぐ近くにもいました。
キバ(象牙)が珍重され高価に売買されるので、今だに密猟があるらしいです(日本では印鑑の材料として喜ばれるのですが、買い手が日本人だとすると恥ずかしいことです)。
 
《クロサイ・シロサイ》
   シロサイの母子です。まるで手配写真のように「正面」と「真横」になってしまいました。
    始めて見た時、その色からクロサイかと思ってしまいました。子供サイはとても可愛いです。ママの傍を離れません。
 
かつてサイは世界に広く分布していたらしいですが、今はアフリカに2種、アジアに3種類しかいないのです。
これも角が漢方薬(サイカク)として珍重されているために密猟が絶えず、個体数が非常に減少してきています。
主として草を食べるために口幅の広い「シロサイ」と、木の葉を食糧とする口のとがった「クロサイ」がいます。
シロサイという名前はオランダ語で、「幅の広い」と言う意味の「ワイト」が訛って「ホワイト」になり、そのままシロサイと呼ばれるようになったのです。これに対応して他方をクロサイと呼んでいるだけなのです。
色は両方ともグレイで同じです、身体の色だけでは区別が付きません(素人には)。
ここマサイ・マラ国立保護区には、この親子のシロサイの僅か2匹しかいないのです。僅か2匹ですって!
たった2匹になってしまったのにはどのような背景があったのでしょう、後でゆっくり調べてみたいと思っています。
子供のサイはママのまわりをうろうろと前になり後ろになりして歩いていました。
この写真では顔がよく見えませんが、動物の子供はみんなあどけない可愛い顔をしています。
この子のパパはタンザニア・セレンゲッテイに住んでいるので、「通い婚」で生まれたそうです。
パパは単身赴任なのか、ママは実家のあったこのサバンナが離れられないのでしょうか。
別れ別れに暮らしているシロサイの気持ちは人間ごときに理解できないものなのでしょう。
年に1度ほど、ママが子供を連れてセレンゲッテイの方へ出向いているというマコーリさんの話でした。
もっと子供が増えてくれますようにと祈りたい気持ちです。
 
《バッファロー》 
  バッファローも群れを作って移動していました。
  大人は確かに黒いですが子供は写真のように
  茶色でした。保護色でしょうか。

  
ちょっと見えにくいのですが背中に4羽のウシツツキ(鳥)を
止まらせています。ウシツツキは毛の中の虫退治をして
くれるので嫌がりません。仲良く共存しています。
  
サバンナで見るものはクロスイギュウという種類で、低地から高地にかけて群れを作って暮らしています。
熱帯アフリカの森林に暮らすアカスイギュウと言う種類もいるそうですが、マサイ・マラでは見られません。
クロスイギュウはとても好戦的で、何にでも突き進んで行くそうです。
顔はなかなか柔和でおとなしそうに見えるのに、いざとなると角と蹄とで挑んでくると言うことです。
あの立派な角を振りかざして向かってきたら怖いだろうと思います。
ここマサイ・マラの動物の中ではもっとも危険な動物だとマコーリさんが教えてくれました。
ここにはウシツツキ(鳥)が沢山いました。バッファローとウシツツキのように、ワニとワニ千鳥(鳥、歯の掃除をする)、ゾウとアマサギ 
(鳥、皮膚の掃除)の共存関係が知られていますが、私が気付いたのはウシツツキだけです。
もっと良く探してみたら良かったのに、ワニ千鳥とアマサギには気付かずに過ごしてしまいました。
   
《ヒョウ》 
アフリカン・ビッグ・ファイブの中で、私が見ることのできなかった唯一の動物です。
個体数も少ないのでしょうが、生活区域が広いので見つけるのが困難なのかも知れません。
森林、サバンナ、山岳地帯、砂漠、荒れ地など、どこにでも適応できる非常に俊敏な動物です。
木登りも水泳も得意です。スポーツ選手だとしたら、さしあたり「近代5種」の選手でしょうか。 
森林伐採による生息地の分断や、あの美しい豹文柄を求めて密猟が絶えず、個体数が非常に減少し希少動物と化しました。
何年か前からファッション業界でアニマルプリントの洋服やファッショングッズが流行っています。
なかでも「ヒョウ柄」は人気があるようです。梅の花のようできれいです。
マサイ・マラのサバンナでは遭遇することが非常に困難と言うことですが、はじめて行って、たった6日間の滞在でビッグ・ファイブ全部に会えると思っていたら虫が良すぎるかも知れません。
逆に、5種類中4種類も見られたことはひたすらラッキーだったことと、ガイドのマコーリさんの腕前によるものと感謝しています。
 
ヒョウの代わりにチーターを紹介しましょう。
 
《チーター》 (アフリカン・ビッグ・ファイブではありません、お間違えなく)

    最初に出会ったチーターは若い兄弟です。
    見ている間、ずっと2匹でじゃれ合っていました。

                                            
                              
この写真は「恐る恐る」登っているように見えますが写真の腕が悪いためです。                                              
実物は大変堂々と登っていたのです。
 
 
ヒョウの代わりというわけではありませんが、同じネコ科の動物であるチーターには何度か出会いました。
とても動きがしなやかです。大きなネコという感じ。
日本で飼われている猫の多くは飽食の日々のためかでっぷり・ぷよぷよしていますが、チーターはさすがに自分で狩りをして暮らしているために
キリリと引き締まった身体で、ほれぼれするくらいスリムでスマートでした。
若い兄弟チーターにも出会いました。彼らは機嫌が良かったのでしょうか、それともいつものことなのか解りませんが木に登って見せたり、糞をしたりと私たち観光客にとてもサービスをしてくれました。
 
サファリで有名なアフリカン・ビッグ・ファイブでさえ、個体数が減ってきています。
地球上で暮らすすべての生き物が、平穏で豊かな暮らしをしていくために、これ以上自然を汚染・破壊することなく、何とか修復し、砂漠化を防ぎ共存共栄をはからなくてはならないと思いました。