【アフリカへ行きました】
 
15) デザートを食べるとき
 
昼食も朝と同じようにほとんどがブッフェスタイルでしたが、夕食は1種類のコース料理だけでアラカルトのメニューはありません。もしも嫌いなものでもあれば何か別のものを用意して頂けたかも知れませんが、私たち家族は毎晩決まりのコースを美味しく頂きました。
オードブルからスープへと続き、デザートまですべてフランス料理で、作法通りにテーブルサービスされました。5回の夕食でしたが、毎晩違うお献立でしたので、飽きると言うことはありませんでした。 
 
昼食は1日の内で一番豪華だったかも知れません。ブッフェテーブルにはオードブル、スープ、肉・魚料理、サラダいろいろ、温野菜いろいろで、その他に、ほとんど毎日カレーとロングライスが変わらず並んでいました。日本人が多いのでそのためでしょうか。毎日調理法の異なるパスタも1テーブルに姿をみせていました。
昼食は毎日12時半から2時半のあいだに供されました。朝のゲームドライブから帰って朝食(8時から9時)を頂いて、ものの3,4時間しか経っていないというのに、きれいに盛りつけられて並んでいるお料理を見ると不思議に食欲が湧いてきて、毎日きっちりスープから順にコースのお料理をお皿に取り分けてしっかりお腹に納めてしまっていたのです。
 
お昼のブッフェテーブルに並んでいるお料理類は、デザートに至るまでとても充実していました。お食後はフルーツ類はもちろんのこと、なんと言っても圧巻だったのはお菓子類でした。
ケーキいろいろ、ババロアやムースなど冷たいお菓子いろいろがそれぞれきれいに盛りつけられてブッフェテーブルの一角を占めています。若くても年寄りでも、例え男の方でもお菓子の好きにはこれほど幸せな気分にさせてくれるものは無いと言うほどの素晴らしさでした。
実際には何種類あるのか数えてみませんでしたが、ほとんど毎日10種類は並んでいたと思います。   
シュークリーム系統はお得意と見えて毎日並びました。日本で見慣れているキャベツ型はもちろんのこと、時にはスワン型、また別の日にはエクレア風にチョコレートが掛かっていたこともありました。言うまでもなく中には白っぽいカスタードクリームが入っていました(「14)あら?卵の黄身が・・・」参照)。
一度に沢山食べられない私など、どれを選ぶかいつも悩んでいました。きれいですし、美味しそうですしもう目移りしてしまって、どれをお皿に頂こうかと決めるのが大変でした。よく「甘いものは別腹」などという言葉を聞きますが、私の場合、満腹は満腹でどうしようもなく、予めデザートの分としてお腹に少しはゆとりを残しておかないととても手が届きません。
 
その日も彩りの可愛いフルーツのババロア風のものにしようか、プリンをフルーツとホイップクリームでデコレーションしたものにしようかとデザートの前で悩んでいました。二つとも食べたいのですが、二つは無理です。家族はてんでに自分の好みのものをお皿にとりわけてさっさとテーブルに戻ってしまいましたから、半分ずつ取り替える交渉もできません。
そこへ外国の女のかたがデザートテーブルに近づいてきて、私が候補として選んでいたババロアとプリンをそれぞれケーキサーバーで半分だけ切り取って自分のお皿に取り分けられたのです。
当然、デコレーションされたお菓子はバランスを崩して無惨にも倒れてしまいました。
彼女は当然のことのように半分になって倒れたプリンとババロアをそのまま残して自分の席へ戻って行かれました。
 
「食べたいものを食べたいだけ取り分ける」ことは、無駄は出ないし各自の自由意志を尊重する合理的な考え方で、ブッフェ形式の良さであります。
「両方食べたいけど多すぎるから半分ずつ貰おう」という考え方は充分理解できることです。
沢山取りすぎて残すよりは、残ったものが無惨な姿になっても、必要な分だけしか取らない・食べないと言う行動を目の当たりにしてちょっと驚きました。
私なら、欲しいだけ取り分けたために初めはきれいだったお菓子が惨めな有様になってしまうくらいなら、むしろ自分の食べたい気持ちを我慢する方を選択します。そのためにデザートテーブルの前で悩んでいたのです。
合理的だとは言うものの、残りものがみすぼらしくなってしまったのでは、一生懸命作ってきれいにデコレーションしてくれた料理人に申し訳ないようで、気が咎めます、私にはとても出来ない行為なのでした。
合理主義に徹っして食べたいものを食べたいだけとるのか、調理人の心意気と作品の美しさを尊重して自分の欲求を抑制するのか・・・・・、たかがデザートではありますが、どちらの選択が良かったのか未だに結論出来ないでいます。人それぞれの考え方によるのでしょう。
 
勿論その日のデザートは、半分になって崩れかけたプリンとながながと寝転がってしまったババロアの半分を有難く頂き、両方の美味しさを満喫させて頂きました。