アラベスク

  私のスキー歴は、家族の事情で約10年のインターバルを
置いて今年が3シーズン目にあたる。無事にこの年末年始も
スキー場で過ごすことが出来た。
例年になくひどい吹雪とともに志賀高原のホテルへ到着したので
今回は雪不足の心配はないとフロントマンに喜んでもらえた。
娘たちが5歳と3歳で始めて滑ったときが私にとってもスキー1年生。
スポーツは見るのが専門だったので、始めて手がけた運動だった。
シーズンごとに上手くなる娘たちに取り残される一方の私だが
滑るのは気持ちよかった。スピードが出てくると止まりたくなり、
スキーヤーやボーダーが視野に入るとドキドキ・オドオドして
立ちすくみ寸前では上達とは縁遠い。それでもここ数シーズンは
なんとか転ばないで一日を終わることができるようになった。
以前はゲレンデの端の方を遠慮がちに滑り降りていたが、最近、
中央あたりを滑っていると皆さんが避けていって下さることがわかり、
なるべくなかほどを滑るようにしているのが功を奏したのだろう。

  もう少し若ければスキー技術を補うためにファッションで
対抗するというのも手だが、年齢を考えるとそれも気が引ける。
まあ楽しめれば良いと割りきることにした。もう一つ、スキーの時
いつも気になるのは紫外線対策。今シーズン取り組んだ試みは
『露出皮膚面積の縮小』である。そこで私が編み出したのは
名付けて【アラベスク】。つまり、帽子は上まぶたにかかるまで
深く被る。ネックウオーマーを鼻の上まで引っぱりあげる。
ゴーグルを帽子とネックウオーマーに跨がらせて装着する。
これでオーライ、顔の皮膚は残らず何かしらで覆ったことになる。
娘達は「怪しい」、「正体不明」、「それなら眼出し帽でも良いじゃない」
と笑い転げる。

  でも、このスタイルはちょっとアラビア風で素敵かも知れないと
思っている。アラブの女の人たちは皆黒いチャドルと呼ばれる
ベールで身を包み、目の部分はメッシュのような素材で外が
見えるようになっている。彼女らはとても神秘的で魅力的に見える。
私は自分のこのスキースタイルを【アラベスク】と名付けることにした。
「アラベスク」すなわち「アラビア風の」という意味。そういえば
バレエの基本ポーズにも「アラベスク」と言うのがあるし、
ドガの繪にも「アラベスク」と言うタイトルがあったような気もする。
ともあれ、私が考えたこのスタイル【アラベスク】(もうすでに他の方々も
試していらっしゃるかも知れないが)、来シーズンにはぜひ
同じ色の毛糸で帽子とネックウオーマーを編んで今よりさらにお洒落に、
格好良く(?)滑りたいと思っている。