クッションカバーがやっと出来た



ああ、できた!やっと、小型のクッションカバー4枚が仕上がった。

材料を見つけてからなんと1年がかりの大仕事(?)だった。刺繍も

何もしないでただ縫ってファスナーをつけるだけなので最初は2−3

週間もあればできあがるだろうと軽く見ていたのに大間違いだった。


 材料は、母の愛用していた2枚のショールである。母が亡くなり、

衣服などを整理していたら何枚かのショールが出てきた。そのうちの

1枚は茄子紺のシフォンベルベット製で裏地がついたもの、晩年はいつも

冬になると近くへ買い物にでかけるとき愛用していた。他の1枚は、

えんじ色の小花の絹レース編みで、灰色の裏地がコントラスト良く

付いていた。こちらは若いときのものらしい。はっきりした記憶は

ないが何か懐かしい気がした。あやふやな記憶を確かめるために母の

アルバムを広げてみた。後ろからページをめくると次第に若くなって

いく母が写真のなかでこちらを見返している。そうそうこれは、

孫を連れて京都へ行ったとき、これは夏休みの軽井沢だから関係ないし

・・・。ページをめくる毎に母は若返っていき、とうとう、白黒写真で

30歳代の母に出会った。恐らく父が撮ってくれたものだろう、私の

小学校入学式当日らしく写真の母は黒い羽織の和服姿で、その前に

大きなランドセルを背負った私がはにかんだような顔をして立っている。

母は腕に軽く畳んだショールをふわりとかけていた。カラー写真では

ないので色は分からないがその小花模様は私が見つけたものと全く

同じだった。更にアルバムをめくっていくと他にも、知人と並んで

撮っている写真で母は肩にそのショールを纏っていた。春のあらしの

日に出かけたのだろうか二人とも髪の毛が風に煽られ踊っている

ようだった。


 改めてショールを手に取ってみると痛んでいるところは全く見あたらず、

光りのあたり具合によってあでやかに見えたり、落ち着いてみえたりして

とても素敵、きっとお気に入りだったのだろう。


 この2枚のショールは処分するには忍びがたく何か再利用できないものか

と考えたあげく、小型のクッションカバーに変身させることにした。

2枚を組み合わせて両面に使うとちょうど4つの小型クッションカバーが

仕上がる大きさだ。ティテーブルの回りに置いてある椅子が4客あるので

そこで使うことにした。そこまでは良かったのだが、さて裁断してミシンを

かけようとしたが、絹製品のためかつるつる滑るし歪むしで四苦八苦、

大変な作業になってしまった。さらに裏地付きのまま使ったためと、

きっしりしたレースはミシンの針もぎしぎしとして通りにくく、ついに

手縫いに変更せざるを得なくなった。試行錯誤を繰り返している内に1年が

過ぎてしまった。でも何とか完成したので言いようもなく嬉しい。苦労は

したが母愛用の品を捨てることなく変身させられてつくづく良かったと

思っている。