信号無視

  二人の娘達がお世話になった小学校のバザーに出す品物を届けに行った帰り道で

のことである。小学校正門前の車道を半ばまで歩いてきたとき、突然後ろの方

から『いーけないんだー、いけないんだ、赤信号でわーたった』2〜3人の

子供達の囃子声が聞こえた。

 

  振り返ってみると、私のすぐ後ろに小学校3〜4年生くらいの男の子が立って

いて、囃し立てた子供達に向かって怒鳴り返した。『だって、おばさんだって

ボタンを押さないでいったもん!』頭をガーンと殴られたような気がした。

ボタンを押して信号が変わるまでの時間が待ちきれずついつい赤信号のまま

横断していたのだ。そばに小学生がいたこたは眼の端でとらえていたが信号

無視をしていることを意識していなかった。ああ大変どうしよう、年甲斐も

なく思わず胸がどきどきした。私は直ぐに子供達に向かって頭を下げ、『ご

めんなさい、おばさんが悪かったわ、今度からちゃんとボタンを押して、

青になってから渡るようにします』と言った。ほかにどんな言い訳もない、

恥ずかしい思いが先に立ち顔が赤くなってくるのを感じながら

逃げるように家へ帰った。

 

  心のどこか隅の方で(どうせ、車の往来は少ないからこのまま渡ってしま

えばいいわ)という気持ちがあったからだ。周囲の状況にもう少し配慮する

ようにしておけばよかったと今になって後悔している。

 

  「安全のために交通規則を守り、信号をよく見てけがのないようにしましょう」

といつも学校や地域社会は子供達に教育している。にもかかわらず大人の私が

子供の前でルール違反をしてしまった。どのような事であろうと、いくら教育

しても口酸っぱく言っても、実践の面で多抜かりがあったのでは何にもならな

い。社会での大人の行動は常に子供達の注目を浴びているのだと心すべき

だった。ほんの1分を惜しむために歩行者専用信号機の存在を無視して

横断した私に倣って付いてきた子供の心を傷つけたかと思うと無償に自身が

腹立たしくなってしまう。(私はよく気を付けているから大丈夫)という言い

訳は子供達には通用しない事を心すべきであった。

 

  小学校PTA主催のバザーに少しでも役に立てばと不用の品を届けたまでは

よかったのだが事後処理が悪かった。やりきれない気持ちになっている。交通

規則に留まらず、大人の日常行動はいつも好奇心旺盛な子供達が見つめている

ことを忘れてはならない。明日の日本を担う子供達が{危険な17歳}を無事

乗り越えて成人するために、大人の私たちこそ全てのルール違反は許されていな

いのだ。改めて自分に言い聞かせているところである。