【トルコの休日】 10)エフェソス(その2) 《エフェソスで一番の人気もの》
 
エフェソスは本当に広くて見どころがいっぱいある。片っ端からお土産話をしていたのではきりがない。観光客も多いがここを訪れた歴史的著名人も数多い。
筆頭は「聖母マリアと12使徒の一人である聖ヨハネ」、「クレオパトラ」、「アレクサンドロス大王」、「哲学者プラトン」などが訪問者の記録に残っているそうだ。
この広さと歴史的価値の高い遺物・遺跡の数々、どうしてここが世界遺産として登録されていないのか不思議に思った。
 
《エフェソスで一番の人気もの》
 
 
この女性がエフェソスで一番の有名人のようだ。
見物客のほとんどが彼女の前で足を止めて群がり、写真を撮ろうと焦っている。彼女だけを撮りたくて見物人がいなくなるのを気長に待つ人、ツーショットで撮って貰っている人、彼女を囲んで記念撮影するグループなど、押し合いへし合いに近い状態だった。
おっと、「女性」などと言ってはいけない。その名も「ニケ」と言うギリシャ神話の女神様なのだ。しかも、「ニケ」は勝利の女神なのである。戦の時、彼女がそばにいるとゼウスは必ず勝利したという。勝利を祈願し、「ニケ」の像を軍艦の舳先につけることもあったそうだ(戦とは無関係だが、映画《タイタニック》のあの名場面を思い出してしまった)。
「ニケ」を英字に直すと「NIKE」、英語読みで「ナイキ」。ここまで来るとおわかりだろう。あの有名スポーツ用品大手メーカーの名前の由来は彼女だったのだ。「フーン、そう言うことなのね」。スポーツに勝ち負けはつきもの、勝利の女神の名前ならスポーツ用品会社の社名に最適だし、勝利祈願のツーショットに文句はないだろう。また「おみやげ話」のネタにも打って付け、だから彼女一番の人気者だったのだ。
そう言う私も他の人たちが画面の入らないタイミングを待って撮ったのだけど、あら、しまった、影が・・・。
 
勝利の女神「ニケ」像はギリシャを中心に地中海地方ではあちこちに残されていたらしい。私がエフェソスで出会った「ニケ」はレリーフ、豊満で、躍動的で、立派な羽を持った童顔の女性像だった。
しかし、世界的に有名な「ニケ」はフランス・ルーブル美術館にある《サモトラケのニケ》と呼ばれる大理石像である。全体像が揃っているわけではないが、その均整の取れた素晴らしい像は美術館の中でもっとも目立つところに座を占めているそうだ。1896年にフランス領事が、地中海のサモトラケ島で大理石の胴体部分と、118個の破片になっていた左の翼を発見した。フランスへ持ち帰り復元したものが展示されているのだ。昨年、たまたまテレビで見聞きした話によると、右の翼はついに発見されなかったため、左の翼を元に計算して新たにコピーを作成し取り付けられたものだそうだ。顔も腕もないが、美術館で一番目立つ所におかれているだけあって美術的価値の極めて高い、素晴らしい大理石像だという(残念ながら、私は写真とテレビの映像でしか見ていない)。