2005年6月10日(金)〜6月12日(日)まで、
第21回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会(日臨皮学会)が
ホテルメトロポリタン高崎を中心にして盛大に行なわれました。
皆様方には大変にお世話になり、ありがとうございました。
ホームページアドレスは
http://www.hattori-hifuka.com/gakkai/main.htmです。
この学会を記念して、雑誌「Visual Dermatology」12月号で特集を組みました。
題して
「熱く語ろう「日常診療トピックス」!です。
私のお礼のあいさつを掲載させて頂きます。
羅針盤 −第21回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会より− 服部 瑛(はっとり皮膚科医院) |
秋たけなわの10月、この“羅針盤”を書いています。第21回日臨皮学会を終えて僅か3か月。しかし私にとっては遠く3年前にも思えるのです。この空間的違和感はいったいなんなのでしょうか?
学会開催の2年前の平成15年春、図らずも学会会頭をお引き受けしました。いや“引き受けさせられた”といっても過言ではありません。皮膚科診療に埋没して安穏な日々を過ごしていた私には晴天の霹靂でもありました。
お引き受けした当初は、この高崎という地方都市に、どうしたら多くの皮膚科医に来ていただけるかを楽しく考える余裕がありました。「皮膚科を楽しもう!」というテーマの中で優秀・著名な先生方に実りあるお話をしていただけたらどんなにすばらしいかなどと夢想していたのです。そして、地方都市の学会開催でも、演題さえ吟味すればご参加の先生方に“皮膚科を楽しんで”いただくことは可能だと楽観的に考えていたことを思い起こします。
もちろん物事はそれほどにうまくいくはずはありません!
学会開催まであと半年という時期、突然、信頼して事務一切を任せていた秘書が某高校に就職が決まって急遽辞めることになり、にわかに忙しくなりました。とにかく今までの過程が全く分からない状況で、パニックに陥ったのです。おまけに今年は重度の花粉症。実に厳しい後半戦が待っていました、といいたいのですが、幸いにも、非常にタフな事務局長の五十嵐俊弥先生(五十嵐皮膚科医院)の存在がありました。私の苦しさをさりげなく気遣い、いつものように私を助けてくださったのです。もちろん、ここでまた奮起させられました。
いざ学会が始まり、最大懸案の伊香保温泉の行事(Meet the expert 、その他)が無事、大成功のうちに終えることができた翌日、宮地良樹教授(京大)の最初の特別講演が満席になっていることを知って驚くと同時に、大層有難く、心から安堵しました。
圧巻だった懇親会での「上州高崎どですけ連」の”阿波踊り”、満席だった学会終了後の「市民公開講座」、嬉しい悲鳴を上げるほど一つ一つの企画が成功裡であったことなど、助けに助けられて、“奇跡的に”この学会を無事終えることができ、今、心から感謝しております。
いつの間にか皮膚科でも学会が数多くなり、やや形骸化してきているように思われてなりません。私だけの生意気な意見でしょうか・・・・・。
新しいことを構築することはもちろん大切なことですが、日臨皮はもっと足元を見つめて皮膚科を見直し、臨床に特化する“場”にならなければと願っております。
次回の根本治会頭(札幌市)、次々回の水野勝会頭(広島市)の日臨皮学会でのご活躍を心から期待しつつ、今学会にご参加・ご協力いただいた先生方に厚く御礼申し上げます。
ありがとうございました。
総論 |
はじめに |
数年前より日本皮膚科学会は「教育」、そして日本研究皮膚科学会は「研究」に特化することを目指しています。そうした観点から考えると、日本臨床皮膚科医会(日臨皮)は「臨床」に特化すべき立場の団体といえます。
また、今年の日臨皮学会は、「医学会」から「医会」に名称変更された最初の学会です。そこで私たちはこの学会で“臨床に特化するとはいったい何か”を含めて、新しい試みを検討しました。
第7回大会において、加藤吉策先生(新潟県)は、それまで会期1日であった本学会を2日に延長し、以来その試みは承認され継承されています。これは日臨皮学会が、数多くの皮膚科関連学会の中でも特異な立場で、多くの情報を提供していることに他なりません。
以下,今学会の試みを申し上げます。
Meet the expert in伊香保温泉 |
2003年夏、私は、PDA(Panpacific Dermatology Association)学会に参加しました(Visual Dermatology,2:101,2004)。そこで、フレンドリーで楽しい学会が身近にあることを知ったのです。この試みが日本でも実現できないものかと真剣に考えました。
その回答の一つは、「Meet the expert」という企画でした。教授などの著名な専門家と実地皮膚科医との歓談を通した”ざっくばらんな“融和を目指した試みです。そのためにはどうしても会期をもう半日延ばさなければなりませんでした。
数度の実行委員会での検討の結果、とにかくやってみようという方向性でまとまりました。そして”ざっくばらんな歓談”ができる場所として、高崎市に程近い伊香保温泉を会場とすることにしたのです。せっかく参加していただくのですから、快適に過ごしていただける場所が必要だと考えました。しかし、その準備には予想できなかった悪戦苦闘が待っていたのです。なぜこのような試みを考えたか反省し、自問した時期を思い起こすと、今でも胸が締め付けられる思いがします。
救いは多くの先生方のサポートでした。
そして6月10日当日。午後2時から始まった「アトピ−性皮膚炎」と「乾癬」のパネルデスカッションに、予想を上回る多くの参加者があったことで、まず、びっくりしました。その後伊香保温泉に無事移動でき(!)、後半の会合が熱く盛り上がったと聞きました。私が挨拶に出向いた頃には大きなうねりが終わり、新しい流れの構築を垣間見ました。
今回のこの試みが”無謀”であるとの謗りは免れません。しかし参加された多くの先生方から、感謝の言葉を聞かせていただき胸をなで下ろしています。この企画をリードしてくださった講師の先生方、さらにはご多忙な中ご参加いただいたすべての先生方に感謝いたします。
30分枠の一般演題 |
西山茂夫先生(北里大学名誉教授)のお葉書の一文が参考になりました。1時間で一題という演題もおもしろいですよ、というご意見でした。
これを何とか具現できないかと考えた末、この企画を立てました。しかしもし、演題が来ないと企画倒れになる恐れがあるので、10数題、興味深い演題をキープして演題募集を行いました。また逆に、多く来すぎても収拾が取れない事態になりかねないので、演題募集期間を短くしてなるべく集まらないように画策しましたが、最終的にはなんと45題も集まってしまいました。
このことは、ポスターセッションや短い一般演題に飽き足らない多くの皮膚科医の存在が明確になったように思われます。また実地皮膚科医には多くの論客が存在することを知ってとても嬉しく思いました。
総じて、会場が狭いとか、興味ある演題が重なって聞けないというご意見もありましたが、結果的には日臨皮しかできない企画が提供できたと思います。今回、この中から興味深く思った内容を中心に特集(Part 2)として掲載いたしました( 1198頁~ 1231頁)。
医会の学会への参加 |
各地の大小さまざまな医会活動は身近で、かつ重要です。また多くの皮膚科医がその恩恵にあずかっていると推定されます。そこで本学会に、それらの活動が具体化できないかと考え、この企画が生まれました。
今回は、大きな団体で活動的な「東京都皮膚科医会」と「神奈川県皮膚科医会」にお願いしたところ、両者とも、快く引き受けてくださいました。東京都皮膚科医会は「今、食はどうなっているかー患者指導に必要な知識」、神奈川県皮膚科医会は「タバコと皮膚」、という身近ながらも斬新な話題を提供してくれました。これは画期的な成果だと自負しています。
ご参画いただいた多くの先生方には心からお礼申し上げます。
新しい切り口のシンポジウム・特別講演 |
多くの皮膚科関連学会があるということは、同じ話題を何度も聞く(聞かされる?)事態を招くことになりかねません。今回は出来得る限りそれらを排除することを考えました。宮地良樹教授(京大)には、今まで話したことのない話題提供を強くお願いしました。清水宏教授(北大)には、面白い話題を考えてくださいと厚かましくもお手紙しました。そのほか多くの講師の先生方にも同様のお願いをしたのです。幸運にもすべての先生方は、私たちの提案を快く引き受けてくださいました。
実行委員会で吟味した「日常よく見る皮膚炎・湿疹について考察する」、「皮膚科におけるアナフィラキシー対策」は日臨皮らしい話題提供だったと思われます。嬉しいことにこのシンポジウムには多数の参加者がありました。日臨皮が提案できる試みを確認できたように思われます。そこで総説(Part
1)では「日常よく見る皮膚炎・湿疹について」の特集を組みました( 1180頁〜1197 頁)。
上州高崎どですけ連 |
私は、地方都市だからこそ、各科の連携が必要だと考えます。高崎市医師会の役員の先生方は、私たちの学会を好意的に見守ってくださっていました。そして懇親会では、もはや群馬県では著名な「上州高崎どですけ連」の登場依頼を快く引き受けてくださったのです。
「どですけ連」の阿波踊りは大盛況、そして大成功(図)。学会終了後、練習中からのDVDを見せていただきました。私たちの学会のために忙しい中、よくぞここまで練習を重ねて出演してくださったものだと思い、ただただ感謝。地方では地方なりの歓待方法があると、胸を張ることが出来ました。
懇親会の料理は、群馬県の女性皮膚科医6名にお願いしました。その思いと用意周到さは、五十嵐事務局長も感嘆。何度も試食して懇親会に望んだのです。食物不毛といわれる上州でも、存外おいしいものがあることに驚き、楽しんでいただいたのではないでしょうか。
懇親会での上州高崎どですけ連の阿波踊り
「ど」はドクター、「で」はデンティスト、「すけ」は看護師など
『助っ人』から命名され活動しております。
おわりに |
かくして学会は無事終了。その後の「市民公開講座」もほぼ満席。すばらしい話題提供でしたので、その成果を市橋正光先生(神戸大名誉教授)にまとめていただきました( 1232頁〜 1240頁)。題して「皮膚科が伝えたいスキンケア」。患者さんへの説明材料になればと思っております。
振り返ってみて、”奇跡的”に、それも”身分不相応”に、成功したというのがいつわざる実感です。準備期間の2年間の長かったことが、嘘のように思われます。多くの先輩、後輩との“友情と和”を再認識させていただきました。
今学会で、“皮膚科を楽しんで”いただけましたら、私たちにとりまして望外な喜びです。
追記:紙面の都合上、今回取り上げなかった演題は、『日臨皮会誌』に掲載されます。ぜひご参照ください。
学会内容詳細は↓↓下記クリックしてをご覧下さい。
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