冬の乾燥肌のいや〜な『かゆみ』
実は自分で作り出している?
かゆみのメカニズム
冬になるとどうして、肌がかさついて体のあちらこちらがかゆくなるのだろう。
この季節は湿度が低く乾燥しやすいことはわかっている。しかし、それだけが原因では
なさそうだ。
「個人差はもちろんありますが、肌は言ってみれば油膜でバリアされているのが
普通の状態です。油膜は皮脂・天然保湿因子(NMF)・角質細胞間脂質(セラミド)の
3つで構成されています。(図・参照)。
![](hada.jpg)
特にセラミドは重要な役割を果たします。それ
らが不足するとバリアにすき間ができ、余計なものが入り込んで神経を刺激するわけです」
『余計なもの』とは、有害物質や微生物、紫外線などのこと。壊れたバリアからは刺激が
入り、反対に肌の水分は逃げてしまう。つまり、いくらクリームや保湿剤を塗っても、バリアが
壊れてしまっていてはあまり効果があるとは言えない。
「体質的な乾燥肌というのは意外と少ないんです。多くの場合が後天的、しかも日常的に
行っていることが原因と考えられます。それもここ30年ほどの生活の変化によってですね」
それは聞き捨てならない。どんなことを自分たちはやらかしているというのだろうか。
「いろいろありますが、まず、毎日入浴しているということ。そしてうがいや手洗い。ポンプ式
の液体石けんの使用などです。ね?日常生活では当たり前のことでしょう?」
え?それは、体を清潔に保つために、大事なことなのでは?
過度な清潔志向は不健康
「たとえば、台所で食器などを洗うときあらかじめお湯に洗剤を入れて浸しておくと、油汚れ
がきれいにとれるでしょう?人間がお風呂に入って石けんで体を洗っても同じことなんです。
それと液体の場合、固形石けんよりも使用量が多くなってしまいます。これも脂をとってしまう
要因と考えられます」
そういった日常の行為が乾燥肌を増長させていたのだ。また、体を洗うとき、ナイロン製のタオル
やスポンジなどでゴシゴシこすっているとさらに悪化させることに。つまり、皮膚の乾燥やかゆみは
自ら招いていると言えるだろう。
「うがいや手洗いに関してもあまり神経質になりすぎると菌に対する免疫力を低下させてしまい
ます。健康な体は外部からの汚染に対する免疫力(抗体など)を向上させることが大切なんです」
日本人の風呂好き、清潔好きは湿度の高い風土が影響していると言われるが、24時間、いつ
でも入浴ができるほど便利になった現代においては、かえってマイナスに働いてしまう場合もある
ということか。
「昔、お風呂は薪や石炭で沸かして入っていました。手間も掛かりましたが、今のようにいつ
でもお湯を使えるわけではありませんから、まとまった時間に家族が融通しあって入浴していま
したね。特に冬場は、お風呂を沸かすのは大変な作業ですから入浴の頻度は少なかったと思いま
す。実はそのことが皮膚の乾燥を防いで、適度な潤いを保つことができたはずです」
服部先生が現在進めている調査によると毎日入浴する人は約92%。中には1日2回の人も
いるという。また固形・液体石けんを使う際、手やガーゼで体を洗っている人はわずか18%
前後だ。それだけナイロンタオルやスポンジを使用している人が多い。
「もし、ご自分やご家族に体のかゆみを持っている人がいたら、その入浴状況を思い返して
みて下さい。どんな入り方、洗い方、道具を使っているか。<除菌><抗菌>とうたっている
ものが浴室や洗面所にあふれていませんか」
お風呂が子どもを神経質に?
「少子化・核家族化が進んで、お年寄りが体験的に持っている知恵を、次世代に伝える環境が
なくなっています。それにともなって、親が子どもにかまい過ぎる傾向があります。『お風呂に
入らないと不潔』という概念を無理矢理子どもに刷り込んでいる。そう教えられた子どもは
神経質になりますよ。ただ反対に、最近、何日もお風呂に入らないで平気でいられる若い女性も
いるようで、それは・・・イヤだね(笑)。極端はマズイです(笑)」
服部先生にはもう一つ憂いがある。
「たとえば子どもが素直な好奇心や興味を持って夢中になって本を読んでいたとします。しかし
親は、お風呂の時間だからとか、片づかないからといった大人の都合でそれを中断させてしまう。
それまで子どもの想像の世界に広がっていたものがいきなり現実に引き戻されてしまいます。
これもまた神経質な子にしてしまうのではないでしょうか」
私たちが何気なく「よし」としていたことは、健康にさまざまな悪影響を及ぼしていることが多い。
メディアの情報をそのまま受け入れるだけでは無責任なのかもしれない。ましてや体の変調は、自己
判断せず専門医のアドバイスをもらうことが大切だ。
<ちいきしんぶん 2002.12.6 818より>