貨幣状湿疹・自家感作性皮膚炎

Nummular Eczema and Autosennsitization Dermatitis


服部 瑛     はっとり皮膚科医院,院長


病態と診断

 貨幣状湿疹は、主に下腿伸側に好発する類円形(貨幣状)の湿疹局面で、通常多発する。皮疹の性状は特徴的で、境界鮮明な漿液性丘疹の集簇からはじまり、局面を形成する。中年男性に好発する傾向がある。乾燥した皮膚に生じやすく、また秋から冬に悪化しやすい。細菌感染が発症に関与するともいわれている。多くの症例では再発を繰り返す。

 自家感作性皮膚炎は、貨幣状湿疹でみられるような湿潤傾向の著しい湿疹様病変が急激に悪化したとき、突然全身に散布疹が播種状に出現するものをいう。原発巣の掻破、それに伴う細菌感染などにより、分解産物が血行性に伝播し、アレルギー疹(id反応)を引き起こすとされているが、なおその病因は明らかではない。

治療方針

 貨幣状湿疹は再発しやすいので、早期診断・治療が肝要となる。ステロイド外用剤が有効で、症状に応じて亜鉛華軟膏などの重層療法を行う。貨幣状湿疹の重症例や自家感作性皮膚炎では、短期間のステロイド内服が有用である。鎮痒と抗アレルギー機序を考慮して、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を投与することが多い。二次感染が明らかな時には適切な抗生物質を投与する。

処方例

 下記の薬剤を症状に応じて用いる。

1)アンテベート軟膏 1日2回塗布

2)デルモベート軟膏   1日2回塗布

 重症の場合は、亜鉛華軟膏をリント布などに厚めにのばして重層するとより効果的である。

3)アレジオン錠(20mg)1錠 就寝前

4)アレロック錠(5mg) 2錠 分2 朝夕内服

 重症、二次感染の時には下記を併用する。

5)セレスタミン錠 2ー3錠 内服

6)クラビット錠(100mg)3錠 内服トピックス 多くの抗生物質軟膏やステロイド軟膏に含有されている抗生物質の本症に対する効果に関しては、現在ほとんど無効であるとされている。


今日の治療指針