NSAID 外用剤について

最近、「アトピ−性皮膚炎に関するアンケ−ト調査」と題して、
群馬県下におけるアトピ−性皮膚炎に対する小児科医と皮膚科医
との考え方の違いを報告1)した。そのなかで最も気になったことは、
小児科医の多くの先生方が、非ステロイド軟膏(NSAIDs) を
多用されていることであった。
ことにアンダ−ム軟膏(ブフェキサマク)が好んで使用されているようである。
その使用方法は、第1および第2選択剤として定着している傾向が
認められた1)。この事実に関しては、多くの皮膚科医が同意してくださるはず
である。
  3月24日、日本臨床皮膚科医学会3支部合同学術集会
(東京・コクヨホ−ル)で、「薬疹」が特集された。そのなかの「薬疹の統計」
(伊崎誠一教授,埼玉医科大医療センタ−)でもNSAID 外用剤の
接触性皮膚炎をはじめとした「接触・刺激」の問題がきわめて
多いと報告された。OTC も問題だが、小児科医の先生方の多用・頻用にも
目を向けなければならないと思う。
中條知孝先生がNSAIDsによる皮膚炎悪化の可能性について質問されていた。
このことはとても重要な問題であり、私も以前塩原哲夫教授(杏林大)に
質問させていただいたことがある(私信)。ご返事には、「私は、小児科医が
NSAIDsを頻用している点、OTC にもかなり処方されており、
これがきわめて危険である云々」と書かれていた。

 今なお小児科医を経て皮膚科に来院する患者さんの多くには、
アンダ−ム軟膏などが多く処方されていることを知らされる。
 残念ながら私たち皮膚科医は、かつてNSAID 外用剤をその発売当初、
積極的に認知し、使用してきた経緯をもっている。いまさらと言われる
きらいもあるが、これほどまでに問題が生じてきているNSAID 外用剤
使用に関して正式に警鐘を発する時期にきているのではないだろうか。
その責務は、当然のことながら皮膚科にあると思っている。

1)服部 瑛ほか,日臨皮会誌, 71:36,2001

(高崎市 服部 瑛)
(皮膚病診療、5月号、2002年)