PDA学会に参加して

 加藤友衛先生(日本臨床皮膚科医学会会長)から第55回PDA(Pacific Dermatologic
Association) に参加しないかとのお誘いがあった。8月の忙しい時期なので躊躇しない
でもなかったが、よい機会と思い承諾した。

 8月19日朝、ラスベガス(アメリカ)に到着。ダウンタウンから少し離れたリゾートホテル
で学会が開催された。今回日本からの皮膚科医は加藤先生と私の二名のみ。
 まず驚いたことは、89歳の日系2世女性皮膚科医にお会いしたことだった。すでに
現役は退いているが、毎年参加されているという。私たちが想像するご老人とは全く異
なる。学会期間中最前列でほとんどの演題を聞かれ、パーティでは活動的に話し、おお
いに飲み食べておられた。

 「なぜ毎年参加されるのですか?」「勉強することが楽しいからよ」、「なぜもう必要のな
い皮膚科の勉強をするのですか?」「新しい情報を友達に教えなくてはね。」、「なぜそんな
に早く歩けるのですか?」「アメリカの人たちは大きいから、ついていくためには仕方がな
いの。」、「人生は楽しいですか?」「楽しまなくてはダメよ。」といった具合。その姿勢に、
ただただ賛嘆とともに驚嘆!

 日本でも学会場で尊敬する大先達の福代良一先生や大藤重夫先生を時折お見受け
するが、停年退官年齢とともに学会から縁遠くなる先生方も多いのではないだろうか。
学会は学問の場であるけれども、同時に多くの足跡を残された先生方にとっても楽しい
親睦の場であってほしいものだと思った。

 PDA学会はまさにリラックスした雰囲気。ネクタイをしめている医師などいない。そんな
中で、実地皮膚科医にとって有益な、様々な話題が提供されていた。意外にもタイトな
スケジュールだったが、会場の設定や進行の仕方は日本での堅苦しいスタイルとは異
なる。シンポジストの略歴紹介などないし、氏名を告げることなく活発な討論が展開された。

 3回のディナーパーティに参加したが、夫婦同伴が原則。一人では話題が停滞すること
でも、夫婦同伴なら話が弾むこともよく理解できた。会頭を含めお決まりの挨拶など全く
なし。もう何度も参加し、仲のよい皮膚科医夫妻たちはそれぞれに再会を喜んで談笑し
ていた。いかにもアメリカらしいフレンドリーな世界だった。

 日本でもこうした学会があってもよいのではないかとふと思った。考えられる範囲では、
実地皮膚科医の臨床をカバーしなければならない「日本臨床皮膚科医学会(日臨皮)」が
その役割を担えるのかもしれない。加藤友衛先生は、第20回日臨皮大会(ホテルオークラ、
東京)の会頭で、なぜか私が21回(メトロポリタンホテル、高崎市)の会頭である。おそらく
加藤先生はそのことを知ってもらいたく、あえてPDAに私を誘ってくださったのだろう。楽しく
有意義な学会を体験できたが、同時に貴重な宿題も与えてくださったようだ。

高崎市 服部 瑛