プロトピック軟膏に纏わる問題について

 プロトピック軟膏が発売され、すでに2年近くになる。私の医院では、
平成11年12月より12年9月まで253名についてその効果などを
検討し、先日報告させていただいた。

 その結果、ほてりなどの刺激感という副作用は、実に77.9% にも
認められた。しかしその70% は3日以内に、最長でも2週間以内に
ほとんどが消失することが分かった。つまりほてり感が出てもなんとか
我慢してつけていればアトピ−性皮膚炎の顔面の赤みや痒みは
おおむね改善できるようである。最近長期の塗布で、頸部のさざなみ様
色素沈着にも有効である印象を持っている。この事実は、患者さんには
朗報であろう。それを裏付けるデ−タとして、初診のみで以後来院しなった
患者さんは253例中17名(6.7%)でしかなかった。いかにリピ−タ−が
多い薬剤か実証されたように思われる。

 ちなみに最近配付されたプロトピック軟膏安全性情報(No.8) では、
ほてり感を含めた副作用は40% とのことであるが、ほてり感の評価に関して
多少疑問に感じる報告である。

 その他、副作用と考えられている毛嚢炎は、プロトピック軟膏を塗布した
結果生ずるというより、季節的な変動や生理(女性)との関係の方がより
大きな影響を与えているという印象を受けた。さらにカポジ−水痘様発疹症は、
現在まで2例のみである。その2例は以前にも何回か同様発疹を経験して
いるので一概にプロトピック軟膏の副作用だけとは断定できないように思われた。
使用説明書には、妊婦あるいは授乳中のプロトピック軟膏の使用を
制限しているが、そのためその期間、患者さんの顔面病変はおおむね悪化する
ことが多く、妊娠、授乳中という大変な時期の患者さんの愁訴を考えると
断腸の思いである。私個人の意見としては、顔面だけ塗布する場合、
タクロリムスの血中濃度が上昇するはずもないと思っているのだが・・・。
現在小児用のタクロリムス軟膏を開発中と聞いているが、同時に妊婦、
授乳中の使用制限に関しても早期の適正な見解・是正が望まれる。

 また使用説明書の中の、「手をよく洗い、清潔にしてからお使いください。また、
塗り終わったあとは、塗った指をきれいに拭いて下さい」という記載が見られるが、
本剤使用の有無にかかわらずごく当たり前ことで、実は意味不明な項目では
あるまいか。これらの記載から、一部ではとても怖い外用剤との印象を
持つ患者さんがいることも否定できない。最近、プロトピック軟膏を使用して
問題を感じる症例は、多くの先生方も同意してくださると思うが、眼周囲のみに
皮疹を残す特異な臨床である。この臨床はかつてのアトピ−性皮膚炎
ではあまり経験しなかったものである。まだ数例の経験でしかないが、
その特異な顔貌は患者さんに新たな苦痛を生み出している。

 このように多くの有効例を認めるなかで、プロトピック軟膏に纏わるいろいろな
問題が生じてきているように思われる。アトピ−性皮膚炎を研究・専門にしている
先生方そして担当する製薬会社のできるだけ早期な、具体的な検証と適切な
ご指導を心から望みたい。

    (高崎市 服部 瑛)