【トルコの休日】  15)トルコ・現代のトイレ事情
 
今回の旅行の目的は、トルコの自然および文化に関する世界遺産を巡ること、エジプトゆかりの文化遺産を自分の目で見ることだった。そして、トルコは東洋と西洋の中間に位置し、食の面でフランス、中国とともに世界に名だたる国なので、馴染みの薄いトルコ料理なるものの味をぜひ確かめてみたいと思ったからだ。他にトルコに関しては、トルコ・コーヒー、トルコ風呂が有名と言うことくらい貧しい知識しか持ち合わていなかったし、トルコの一般的な生活様式について深く考えても見ないままトルコへ来てしまった。
 
ツアーの初日、バスの中で添乗員さんからトルコでの一般的な注意事項の説明があった。公衆トイレの使用時には一般にチップが必要、一人一回50クルシェ(40円程度)から1トルコリラ(80円程度)を準備をして入りなさい」とのことだった。ヨーロッパなどでは、トイレにおばさんがいてチップ(使用料)が必要だと承知していたので、“ヨーロッパ圏の風習”を踏襲しているのだと考えた。
 
添乗員さんのトイレ説明はさらに続いた。
「トイレにはペーパーのないところもありますから一応用意しておくと良いでしょう。入り口にペーパーがおいてあり、自分で必要分を取っていく場合もあります」  
     ◆備え付けペーパーがあるとは限らない、気をつけましょう。
「トイレは洋式のところと、トルコ式のところがあります」
     ◆へえ、トルコ式ですって、知らなかったわ。 どういうのかしら(?) 
「日本の便器と同じような形ですが、日本なら前にある被いはありません」
(私の註:それは「キンカクシ」と言うものです)
     ◆じゃあ、のっぺらぼうなのかしら(?)
「トルコ式の場合、ドアの方を向いてしゃがんでください」
     ◆しゃがむ・・・しゃがむですって!!! 
「便器はドアの反対側(奥)に落とし穴があります、位置取りを上手にしてください」
     ◆テクニックをマスターする必要があると言うこと(?)
「ドアに近い横の壁に水道蛇口と小さいバケツのような容器(空き缶のこともあった)があるので、終了後は自分で水を汲んで流してください」
     ◆つまり、手動式水洗(?)、手動式ウオッシュレットでもある(?)
     
古代の水洗トイレに引き続き、またまた「?」が続出してしまった。トルコ式と言っても、エフェソスで見たような古代の集団使用型でないと聞き、取りあえず安心したが、初体験は何時になるのだろうとトイレへ入る度にドキドキした。
 
初日、2日目の昼食のレストランではいずれもウエスタンスタイルだった。そこではチップを受け取るお掃除おばさんはいなかったので無料。宿泊したホテルはすべて近代的な作りのバスルームだったのでここまでは特に問題無く過ごした。
 
ついに第3日目、ドライブインでトルコ式の初体験した。確かに日本と同じように「しゃがむスタイル」。陶製便器もよく似た形だが説明通り「キンカクシ」が無かった。注意事項を聞いていなかったら方向に戸惑ったと思う。説明通りドアに近い右手に蛇口と空き缶のようなものが置いてあった。これが手動式水洗トイレの器具なのだ。トイレットペーパーは無かった(ペーパー・ホールダーも見当たらない)。
 
トイレからジーンズの裾をまくったまま出てくる仲間がいるとき、そこはトルコ式と考えて間違いなかった。その様子を目にすると私たちは皆、待っている間に裾をまくっておくようになった。やはり手動水洗方式は容器から水をこぼす確率が高いのだろう、個室の床が水で濡れている場合がほとんどなので、汚れを嫌っての自衛策だった。さらに、何度か経験するうちに、トルコ式では紙が流れずに詰まっている個室もあることが分かり(水量が少ない?)、紙の類は傍の汚物入れに捨てた方がよいと、ツアー仲間で結論を出し、以後私たちはそれを実行した。今日の一般家庭ではどのような方式なのだろう、ホームステイでもしなければ分からない。
 
レストランはいずれもウエスタンスタイルだった。
ドライブインは、ほぼ1/4がトルコ式で、残り3/4はウエスタンスタイルとトルコ式との混合型だった。ウエスタンスタイルだけと言うところは無かったように思う。博物館や寺院では混合型が多く、トルコ式しかないところもあった。近年、日本では健康、清潔の面から水洗式ウエスタンスタイル(ウオッシュレット)への移行がめざましい。従って公共施設では、和式だけと言うところは極めて少なく、和式とウエスタンスタイルの混合かウエスタンスタイルのみの場合が多いように思われる。
 
あの古代エフェソスでみた集団使用型トイレが個室型へ変わり、いす式の「ウエスタンスタイル」から「しゃがむトルコ方式」に変化したのは一体いつ頃のことで、どんな経緯があってのことだろうか。トルコのトイレの歴史に少し興味を抱いてしまった。