【アフリカへ行きました】
 
30)ロングドライブの日(その4)ブッシュ・トイレ
 
さらに車は進みます。
でも、ちょっと待ってください、私はそろそろ○○の希望があります。
朝、国立保護区のオロロロ・ゲートから入場するときに済ませたのですが、夕方ロッジへ戻るまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
そうかと言ってゲートまで戻って貰うわけにも行きません。
私が言うのも何か気恥ずかしいので、そこは男同士、夫に頼んで貰いました。
話を聞いたマコーリさん、こともなげに
   『ああ、”ブッシュ・トイレ” ね。ちょっと待ってください』
とのことでした。
いやだ、「ブッシュ・トイレ」と言えば良かったのだなんて。
当たり前ではありますが、あまりにそのものズバリなのでかえって驚きました。
英語では「nature calls」と言うのだと思っていたのですが、サバンナではブッシュ・トイレと呼ばれているようでした。
 
現代日本での正式の用語としては 「お手洗い」、「洗面所」が圧倒的に多いですが、最近は「トイレ」がまるで日本語のように幅を利かせています。
以前、話し言葉として「ご不浄」と言う言葉もありましたが、何と言っても一番直接的な言葉は「便所」でしょうか、でも最近使われることは本当に少ないようです。
ひとむかし、ふたむかし前は、「厠(かわや)」とか「はばかり」と呼んでいました。
今では時代劇とか、小説の中でしか使われることのない言葉になっています。
銭形平次の子分のうっかり八兵衛なら 『親分、あっしはちょっくら厠まで・・・』 と言う台詞を残してあたふたと走っていったかも知れません。
 
マコーリさんの『待ってください』の意味はこうです。
1)安全な場所を探します
2)誰からも見えない場所を探してあげます
シンボルマークが付いていなくても、彼が選んでくれた場所が ”ブッシュ・トイレ入り口” と言うわけです。
私たち観光客は、「勝手にサファリカーから降りてはいけない」、「サバンナではすべてガイドの判断に任せなければいけない」ことになっているのですから、彼の指示に従うのは当然です。
 
それからマコーリさんは車をしばらく走らせて行きました、トイレに適当な場所を探しているのでしょう。
やがて、比較的広い範囲に沢山の灌木が生い茂った場所が見えてきました。
どうやらあそこが私たちの目指す「ブッシュトイレ」らしいです。
ようやく車が止まり、『OK』の声がかかりました。
全員が車から降りて、それぞれの「個室」を求めて散らばって行きました。
ネイチャーウオークの時に 《トイレットペーパー・ツリー》と言う木を教えて貰いましたが、見つからないので、ポケットのテッシュウペーパーを使い、からのビニール袋に入れてからポケットへ片付けました。
自然保護のために、このサバンナにうっかり使用済みの紙を捨てるわけにはいきません。
また、手を洗う代わりに使っていたウエットテイッシュウはいろいろな場面でとても重宝しました。
誰ひとり緊急事態ではありませんでしたが、とてもすっきりしました。
『サンキュウ』と声を掛けて車へ戻りました。
 
私たちがブッシュトイレとして使った場所は、下の写真のような灌木が纏まって広い範囲に生えているところでした。
ゲームサファリの時にも、蟻塚が進化(?)したのかと思われるちょっとした灌木の茂みは草原の中にも所々ありましたが、今回立ち寄ったところのように沢山生い茂ったところは初めてで、各自適当に離れて姿を隠すことが出来ました。
 
身を隠した場所に、もしもこのインパラのように可愛らしい先客がいたら、私は嬉しくて有頂天になったかも知れませんが、それより先に、人影に驚いたインパラはサッサと逃げてしまったでしょう。
    このインパラは角がないのでメスあるいは子供だろうと思います。 
    何故かおどおどしています、私たちを危険人物だと思ったのでしょうか。
 
また、ちょっとした木陰は涼しくて、ライオンとかチーター、ヒョウなどの捕食動物たちにとっても昼寝の場所として好適です。
そんなところにうっかり踏み込んだら大変なことになりかねません。
それに先日観察したライオンのように食物の貯蔵場所にしている可能性もあります、食べ残しの肉が置いてあるかも知れません。
いろいろな状況が考えられてあれこれ想像が広がります。
マコーリさんがここなら大丈夫と判断してくれた場所なのに、私はまるで一種の草食動物にでもなったようにドキドキしながら、ブッシュを利用させて貰ってきたのです。
 
    木陰でお昼寝中のチーター・ファミリー。
     さすがに怖いもの無しの捕食動物、親子揃って無警戒に大きなお腹を見せお昼寝中です。