【アフリカへ行きました】
 
36)ヌーのこと
 
ヌーはいつも大きな群れを作り、そのほとんどの場合、仲間にシマウマやトムソンガゼルなどを加えた複合グループを作っていたのです。
種類の違う動物たちが、仲良く入り交じって草を食べているところを初めて見たとき、「サバンナの草食動物たちは、なんて仲良しなのかしら」と思い、感心しました。
人間社会とは大違い、喧嘩をしたり追いかけたりするところは一度も見受けませんでした。
     オグロヌーとトムソンガゼル。
     この写真ではトムソンガゼルは1匹しか見えませんが沢山のガゼルとシマウマが混ざっていました。
 
3種類の動物たちがこれほど仲良く、同じところでおとなしく草を食べているのかとても不思議に思いました。
  (これらの他にも異なった動物同志の組み合わせもあるらしいです)
少し邪魔なのじゃないのかしらと感じられる距離でもお互いに平然としているようでした。
日本へ帰ってから調べたら、その理由は、それぞれがお互いに相手の特徴を利用し合って暮らしているのだと言うことでした。
一種の保身術なのだそうです。
 
次のような理由に基づいているのです。
  「ヌー」は目は悪いが嗅覚はとても優れていて、1Km離れたところで降っている雨の匂いをかぎつけることが出来る
  「シマウマ」は眼は良いが凄く臆病なので、危険(例えば捕食動物の接近)をいち早く察知して素早く逃げ出す
  「トムソンガゼル」は小型動物で肉食獣に狙われやすいから、自分より身体の大きな動物の間に身を隠して暮らしている
さらに別の理由として
  「草深いサバンナで、背の高いシマウマがまず丈の高い草を食べ、中くらいの丈の草が食べやすくなるとそれをヌーが、さらに地面に近い小さな草が剥き出しになるとトムソンガゼルがと言う具合に、順番に食べている」と言う説明もありました。
 
ヌーはシマウマを危険信号機の代わりに利用するかわりにシマウマはヌーの嗅覚を頼りに移動し、ガゼルは身の隠し場所と餌となる草を仕分けして貰うために互いにつかず離れずの状態を保っているのです。
彼らは一体いつ頃からこのように合理的な助け合いの暮らしをしてきたのでしょう。
長い期間を経るうちに学習したのでしょうか。
何千年、何万年、どのくらい昔からこのような関係を保って来たのか想像もつきません。
 
     草を食べるヌーの群れ。
 
ここのサバンナで見られるヌーは《オグロヌー》という種類で、ケニア以南(ケニア、タンザニア、南アフリカ)のサバンナに生息しています。
別に南アフリカ中央部には《オジロヌー》がいたのですが、野生種はすでに絶滅し、現在では繁殖させたものを放牧しているそうです。
ヌーは分類上、ウシ科に属する動物ですから、蹄は二つに分かれていて偶蹄目と言うことになります。
和名は 《ウシカモシカ》。 ウシとカモシカの両方の特徴を持っていることからこの名前が付けられたと言います。
ヌーというのは俗名で、彼らの啼き声から付けられたそうです。
 
それにしても大半のヌーが、いつもうつむき加減で歩いているのは何故でしょう。
眼が悪いから食べる草がよく見えるような格好をしているのでしょうか。
昂然と頭を上げ、胸を張っているヌーは1匹も見なかったような気がします。
ガゼルやオリックス、インパラなどのように「草原の貴公子」然とした気品も感じられませんし、ジャッカルのように小さいながらも毅然とした
雰囲気もありません。
前から見ても、横から眺めても、あか抜けないのです。もしも美人コンテストに出たら不合格間違いなしと言った感じです。
 
世の始まり、神様が動物をお作りになるとき、それぞれに「どのような色・形にして欲しいか」とお聞きになったそうです。
やがてヌーの順番が来ました。
   『さて、ヌーや。お前はどのような格好の動物になりたいのか言ってみなさい、その通りにしてやろう』
ヌーは迷いました。
羽をつけて貰っても空から落ちたら痛い、あまり小さい動物じゃ誰かに踏んづけられてしまう。大きければ目立ちすぎる。
あれこれ散々悩んだ揚げ句、こうお願いしました。
   『角があると偉そうに見えるから、ウシのような角をつけて下さい。
    ふさふさしたたてがみはとても格好が良いから、ウマのようなたてがみをつけてほしい。
    ああ、ひげも欲しいです、山羊のような立派なひげを顎の下につけてください、お願いします』
それを聞いた神様は
   『よしよし、解った。それにしてもお前はなんと欲張りなんだろう』
と言いながら、お願いしたとおりに作ってくださったのが今のヌーの姿だというお話です。
 
目立ちたいばかりにあちこち飾り立てて貰ったものの、結局ちぐはぐな姿になったことを恥じているのでしょうか。
クローズアップの写真が撮れなかったのですが、上の写真で「角」、「たてがみ」、「ひげ」を確かめてみてください。