【アフリカへ行きました】
    番外編 『ヌーの川渡り』


夏休みのご報告を申し上げます。
今回の旅行でもっとも心配した台風の影響も出国・帰国時ともに影響を受けることなく、
順調だったことは大変ラッキーでした。
お陰様で8月28日夜、元気に帰国致しました。
 
夜空の星々も、広いサバンナを走り回る動物たちも、空気の匂いも、今まで想像していた
よりも遙かに素晴らしいものでした。
いろいろな異なった種類の草食動物たちが互いに
仲良く暮らしている一方、肉食獣と草食獣とが互いに生き残るために努力している姿を
目の当たりに見せられて、命の大切さを改めて教えられたような気が致しました。
 
私の夏休みの様子を順次ご報告する予定ですが、帰国前日の夕方に見た「ヌー」の
大群の川渡りはなんと言っても圧巻でした。
余り感激致しましたので、順序は前後しますが、
とりあえず番外編として『ヌーの川渡り』から話をしたいと思います。
 
「ヌー」は年に4回草を求めてタンザニア・セレンゲッテイとケニア・マサイマラの間を行き来しています。
(セレンゲッテイとマサイマラは一つの広大な草原で、国境線で境されているだけです)
行き来のたびに「マラ川」をこえなければなりません、それがあの有名な『ヌーの川渡り』にあたります。
私たちが行ったのは、ちょうど川越えの時期のひとつに当たっていました。
はじめて川渡りのポイントを訪れた時はその日は既に渡り終わっていました。
川の中ではクロコダイルがしとめたヌーをつつき、何十羽ものハゲワシやハゲコウがおこぼれを
貰おうと空を舞っているところでした。
沢山のヌーが犠牲になったと見えて辺りは凄い死臭が漂っていました。
 
翌日訪れたポイントではヌーが続々と集まり、何度も水際まで行くのですが、偵察担当のヌーが
川の中で待ち受ける4頭のクロコダイルを見つけては中止しているようでした。
いつまで待っても渡りは始まりそうもないのでその日は諦めて帰りました。
 
帰国前日は朝からお弁当持参でロングドライブに出かけ、昼過ぎから今までとはまた別の
川渡りポイントで待つことになりました。
対岸(タンザニア)では丘の上方からと左右から
ものすごい数のヌー達が続々と列を作って集結中です。いつも通りシマウマも混ざっています。
ガイドさん達は互いに情報交換するのでサファリカーも次々に集まってきます。
クロコダイルは水の中からヌーの動きを見張っています。カバは全くの傍観者です、
のんびりした様子で水に浸かっています。
渡りを待ち受けるケニア側ではサファリカーがすでに20台近く集まりました。
その傍には既に渡り終わったヌーの群れが列を作って啼いたり足踏みをしたりして待ち受けています。
待ち受けるヌーの群れをウエルカムグループと呼ぶそうで、これから渡ろうとするヌーの家族だったり、
同一グループだったものです。
両岸でお互いに勇気のやりとりをしているように見えました。
 
川渡りは突然でした。
2,3頭がよろよろと水辺に降りてきたと思ったら水に脚をいれ、いきなり泳ぎはじめました。
すると残りのヌーも我先にと水に入り、一列縦隊が一気に五、六列と広がり帯のように
なって渡っていきます。
まるで雪崩のようです、凄い水しぶきです。
いつも一緒に草を食べて、一緒に行進してきたシマウマも負けじと一緒に川を渡っていきます。
シマウマも川渡りをするとは思ってもいなかったので驚きました。
クロコダイルもあっけにとられたのか、ちょっと離れたところから駆けつけるのが遅れたようです。
捕まえようとするのですがうまくいきません。猛禽類も上空で輪を描きながら観察中です。
 
周囲に集まってきたサファリカーの人々は、屋根や窓から顔を出して見守っています。
大きな声で応援したいのですがサバンナでは動物たちを驚かさないように、マナーとして大声を
出さないなっています。
隣のサファリカーから『ガンバレー! ガンバレー!』と日本語の応援の声が漏れ聞こえてきまいた。
それぞれの人々が互いに自国語で応援している様子です。
クロコダイルだってヌーに襲いかかるのは生きるための手段だとは解っていても、気が付くと
皆でヌーの応援をしていました。
 
こちらの岸へ渡り終わったヌーの群れはどんどん増えました。何分くらい川渡りが続いたでしょうか。
時計を見ることも忘れ、手を握りしめて見つめていました。
川渡りの終わりも突然でした。渡り終わって終結したヌーたちの身体は水に濡れて、夕日に
ツヤツヤ光っていました。
数えようもない膨大な数のヌーです、ガイドさんの話では
「今回渡ったのはおよそ12000頭」と言うことでした。
オマケに私たちが願ったように犠牲となったヌーは一頭もなし。ヌーに取っては本当に幸いなことでした。
ガイドさんは『ここ数日続いた川渡りで、クロコダイルも満腹していて余り熱心にハンテイングを
しなかったのだろう』と説明してくれました。
勿論、ハゲタカ、ハゲコウも食事にはありつけなかった訳です。
 
勇気を持って川渡りをし、濡れた背中を夕日に光らせているヌーとシマウマの大群を見ながらの帰り道、
サバンナで生きている沢山の動物たちがいとおしく思え、涙がこぼれそうになりました。